果実学

果実学（果樹園芸学）とは？

果実学、または果樹園芸学（Pomology）は、植物学や園芸学の一分野として、果樹に関する研究を専門とする学問です。リンゴやナシなどの仁果類だけでなく、桃やプラムなどの核果類、アーモンドやクルミなどの堅果類、そしてブドウなど、多種多様な果樹の栽培技術、生理学、品種改良、さらにはそれらの果実の加工や流通、機能性成分の研究までを包括的に扱います。

歴史的に、果実学は仁果類（リンゴ、ナシなど）の栽培や育種に重点が置かれていましたが、現代ではその範囲ははるかに広がり、多様な果樹を対象とした学際的な研究領域となっています。西洋ではブドウ栽培学（viticulture）が独立した分野として扱われることもありますが、日本では果樹園芸学に含まれることが多いのが現状です。

果実学における主な研究目的としては、以下の点が挙げられます。

果実品質の向上: より美味しく、より保存性の高い果実の生産を目指した研究。
収穫時期の制御: 需要に合わせた収穫時期の調整技術の開発。
耐病性・耐ストレス性の向上: 病害虫や気候変動への抵抗性を高め、栽培コストの削減を目指す研究。
加工・流通技術の開発: 果実のジュースやワインなどの加工技術、効率的な流通システムの構築に関する研究。
* 機能性成分の解明: 健康増進に繋がる果実の機能性成分の探索と活用に関する研究。

果実学の歴史：米国

米国では、19世紀中頃から果樹園の拡大と市場の成長に伴い、果実学の重要性が増していきました。合衆国農務省や農業大学では、海外からの新品種の導入や試験栽培が積極的に行われ、その成果は出版物を通して広く農家に伝えられました。

特に1886年には、合衆国農務省に果実局が新設され、Henry E. Van Demanが局長に就任。新規品種の図解を掲載した出版物や年次報告書を通して、最新の研究成果が栽培者や育種家に提供されました。

当時の著名な園芸学者、アンドリュー・ジャクソン・ダウニングとチャールズ・ダウニング兄弟は『アメリカの果物と果樹』を著し、果実学の発展に貢献しました。

新品種の導入に伴い、正確な品種の記録と伝達が必要となり、農務省は画家たちに新品種の水彩画の作成を依頼。これらの水彩画は、農務省の出版物に掲載され、現在では約7700点のコレクションが米国国立農業図書館に保存されています。

果実学の歴史：日本

日本では明治時代、藤井徹が欧米の果樹園芸学を導入し、日本の伝統的な農学と融合させました。藤井徹の著書『菓木栽培法』全8巻は、日本の果樹園芸学発展に大きな影響を与えました。

現在では、農研機構、大学の農学部、各都道府県の農業試験場（果樹試験場）などで、園芸学の一分野として果実学の研究が続けられています。果実学は、食料生産、農業経済、そして国民の健康増進に大きく貢献する重要な学問分野であり、今後もその発展が期待されています。

果実学者

果実学の研究に従事する人を果実学者と呼びます。現在、世界中の果実学者は200人以下と推定されており、その数は減少傾向にあると言われています。

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