枢密院 (中国)

枢密院（すうみついん）とは

枢密院は、中国の唐代中期に設置された、主に軍事を担当した中央官庁です。その起源から、各王朝における変遷、そして役割や権限の拡大、最終的な廃止まで、歴史の中で重要な役割を果たしました。

唐代から五代十国時代

唐代の枢密院は「内枢密使」とも呼ばれ、宦官がその職務を担いました。当初、枢密院は独立した官署を持たず、皇帝と宰相などの大臣間の伝達を担う役割でした。しかし、この特性が宦官の政治介入を招き、後には朝政に深く関与するようになりました。特に、皇帝の廃立にまで影響力を持つようになったことは、その権力の増大を示す例です。

唐が滅亡し、後梁が成立すると、枢密院は一旦廃止され、代わりに崇政院が設置されました。しかし、後唐が後梁を滅ぼすと、唐の制度が復活する中で、崇政院が「枢密院」と改称され、その機能が引き継がれました。

宋代

宋代における枢密院は、軍政の最高機関として位置づけられ、民政を管轄する中書省と並んで「二府」と称されるほどの重要性を持っていました。その主な職務は、軍事作戦の立案、国境警備、軍令や密令の発布、国家の統治を補佐することでした。皇帝直属の禁軍も枢密院の指揮下に置かれました。

枢密院の長官は枢密使（知枢密院事とも呼ばれます）、副長官は枢密副使（同知枢密院事とも呼ばれます）と呼ばれ、文官が任命されました。その下には、武官である都承旨や副都承旨が置かれました。さらに、編修官も設置されました。

中央官制において、枢密使は同平章事より一等下位、参知政事と同格とされ、これらを合わせて「執政」とも称しました。唐代までは軍事情報の管理に限定されていた枢密使の権限は、宋代には軍政最高機関にまで拡大し、その結果、権力集中が進みました。この権力集中を解消するため、1083年には枢密院の廃止が提案されましたが、実現には至りませんでした。

その後、枢密院は中書省との対立を深め、金の侵攻に対して主戦論を唱える中書省に対し、枢密院は講和論を主張するなど、国論が分裂しました。この対立が原因で、宋の皇帝である徽宗と欽宗が金軍の捕虜となるという「靖康の変」を引き起こし、宋軍は瓦解しました。

南宋が成立すると、宋軍の再編成時に枢密院は設置されず、代わりに御営司が設置されましたが、後に復活しました。武官出身の韓侂冑は、都承旨の地位に留まり、皇帝を操って実権を握りました。彼が失脚した後、史弥遠が枢密院の要職に自分の腹心を配置し、軍政を掌握して長期政権を築きました。

元代

モンゴル帝国が成立すると、1262年に枢密院が設置され、行政を管轄する中書省、監察を管轄する御史台と並ぶ、軍事を担当する最高機関となりました。長は枢密使とされましたが、皇太子が兼任する名誉職であったため、実質的な長は知枢密院事とされました。

まとめ

枢密院は、唐代から元代にかけて、各王朝において軍事の中枢を担う重要な機関でした。時代と共にその役割や権限は変化しましたが、各王朝の政治や軍事に大きな影響を与え続けた存在でした。

関連項目

枢密院 (曖昧さ回避)
軍機処

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