韓侂冑

韓侂冑（かん たくちゅう）

韓侂冑（1152年 - 1207年）は、南宋時代の政治家であり、寧宗皇帝の皇后の親族という立場を利用して権勢を振るいました。彼の生涯は、南宋の政治と軍事に大きな影響を与えました。

生涯

韓侂冑は、北宋の政治家・韓琦の曾孫として生まれました。父の恩恵により官僚としてのキャリアをスタートさせ、孝宗皇帝の時代には汝州防禦使という地位にまで昇進しました。1194年、孝宗皇帝が崩御すると、光宗皇帝が病気で喪に服することができなかったため、韓侂冑は趙汝愚と協力して嘉王・趙拡（後の寧宗皇帝）を擁立しました。この功績により寧宗皇帝の信任を得て、彼は急速に権力を拡大していきました。

韓侂冑は、枢密都承旨という皇帝の側近の地位に長く留まりました。この地位を利用して、皇帝の意思決定に深く関与し、自分の息のかかった人物を要職に就けることで、政治を操りました。朱熹の理学を偽学として禁止し、士大夫層への影響力を抑え込むなど、反対勢力に対しては強硬な姿勢を取りました。

開禧北伐

韓侂冑は、金国に奪われた中原の地を奪還しようと計画し、そのために様々な準備を行いました。岳飛の名誉を回復させ、秦檜の罪を明らかにするなど、人心掌握にも努めました。1206年、寧宗皇帝に金国討伐の詔を出させ、開禧北伐を開始しました。しかし、緒戦での勝利の後、宋軍は次第に敗北を重ね、逆に金軍の南下を招くこととなりました。韓侂冑は金国との和議を模索しましたが、金国は韓侂冑の身柄引き渡しを要求しました。

最期

韓侂冑は金国への引き渡しを拒否しましたが、1207年、史弥遠によって暗殺されました。彼の首は金国に送られ、その引き換えに和議が成立しました。韓侂冑の死は、南宋の政治に大きな転換点をもたらしました。

評価

韓侂冑は、その強引な政治手法から多くの批判を受けましたが、一方で、金国に対する強硬姿勢や岳飛の名誉回復など、評価できる点もあります。彼の政策は、南宋社会に大きな影響を与え、後世に様々な議論を呼びました。

参考文献

* 衣川強「〈開禧用兵〉と韓侂冑政権」『宋代官僚社会史研究』汲古書院、2006年 ISBN 9784762925665

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