柏木 (源氏物語)

『源氏物語』「柏木」の解説

あらすじ

物語は、光源氏の四十八歳の春から始まります。重病に伏せった柏木は、女三宮への未練を断ち切れず、彼女に手紙を送ります。女三宮もまた、彼の思いに応え、やがて薫という男子を出産します。しかし、この密通は光源氏に知られ、女三宮は出家、柏木は絶望の淵に突き落とされます。

柏木は権大納言に昇進するも、光源氏の怒りを買っており、病状は悪化の一途を辿ります。彼は友人である夕霧に後事を託し、両親や兄弟に見守られながら息を引き取ります。

薫の五十日の祝いの席で、光源氏は薫の容姿に柏木の面影を見出し、かつての怒りを後悔するのです。一方、夕霧は柏木の遺言を守り、未亡人となった落葉の宮を慰め、やがて彼女に惹かれていきます。

柏木という人物

柏木は、頭中将の嫡男で、優れた才芸を持つ貴公子でした。和琴や蹴鞠、笛を嗜み、夕霧とは親友の関係にありました。彼は、玉鬘に思いを寄せるも、異母姉弟と知り愕然とするという経験もしています。

女三宮への強い想いは、彼の運命を狂わせます。光源氏の留守を狙い、女三宮と密通を遂げた彼は、光源氏の怒りを買い、その結果、悲劇的な最期を迎えるのです。

彼は落葉の宮を妻として迎えながらも、女三宮への想いを断ち切れず、その葛藤が物語全体を彩っています。最期には、落葉の宮との対面を望むも叶わず、夕霧に後事を託し、この世を去ります。

巻名の由来

巻名である「柏木」は、落葉の宮の母である一条御息所の詠んだ和歌「柏木に葉守の神はまさずとも人ならすべき宿の梢か」に由来しています。この和歌は、柏木の儚い運命を象徴するものであり、物語全体を貫くテーマとなっています。

まとめ

「柏木」は、柏木と女三宮の悲恋、そして光源氏の怒り、そして周りの人々の悲しみを繊細に描き出した、源氏物語の中でも特に重要な巻の一つです。柏木の才能、そして彼の運命の歯車が狂っていく様子は、読者に深い感動を与えます。その華麗な世界と、切ない物語の結末は、読後も長く心に残るでしょう。また、巻名の由来や、登場人物たちの複雑な人間関係にも注目することで、物語の理解がより深まることでしょう。

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