和琴

和琴（わごん）

和琴は、雅楽の国風歌舞で用いられる日本固有の絃楽器であり、日本最古の楽器の一つです。大和琴（やまとごと）、東琴（あずまごと）とも呼ばれます。六絃を持ち、琴軋（ことさぎ）や指で弾いて演奏されます。

現在よく知られる箏は大陸からの渡来楽器が基になっており、和琴とは起源や系統を異にします。和琴の起源は神代紀の「天沼琴」（あめのぬごと）に遡り、「天石窟（あめのいわや）前で天香弓六張をならべ弦を叩いて音を調べた」という記述があります。

概要

和琴は、主に宮中の祭祀で奉仕される国風歌舞（「神楽歌」「久米歌」「東遊」「大和歌」など）の伴奏に用いられます。雅楽の楽器の中でもっとも格が高く、古くは位の高い者のみが奏することができました。現在では、主に宮内庁楽部の楽長が奏でます。

弥生時代から古墳時代にかけての遺跡からは、和琴の祖形とみられる木製の琴や、琴を弾く埴輪が出土しています。これらの出土品は、和琴が古代から存在していたことを示唆しています。

『源氏物語』では、古代中国の士君子の倫理性を担った琴に対し、日本伝来の遊楽を楽しむ和琴が対比されています。琴は礼楽中心の楽器、和琴は自由な発想を持った楽器として描かれました。第35帖「若菜下」内の女楽の場面では、光源氏の最愛の妻である紫の上が和琴を演奏する場面が描かれています。

構造

和琴は、全長約193cm、幅は頭部約13cm、尾部約24cm、厚さ約5cmの桐製の胴に、六絃を張った構造をしています。本体は主に桐で作られ、中は空洞になっています。柱（じ）は楓の枝の叉をそのまま用います。絃は尾のところで葦津緒（あしづお）という絹の編み紐で留めます。箏と異なり、手前から一、二、三、四、五、六絃と数えます。

奏法

演奏には、鼈甲または水牛の角で作られた琴軋（ことさぎ、ことさき）と呼ばれる長さ約7〜8cm、幅約1cm、厚さ約3mmほどの笏に似た形の撥を用います。琴軋を右手に持って絃をかき鳴らしたり、素手の左手の指で弾いたりします。座って奏するのが基本ですが、「東遊」では琴持（こともち）を伴い、立って演奏することもあります。神社では降昇神・開閉扉の際、和琴で菅掻（すががき）を奏します。

和琴の音色は、素朴でありながらも神聖な雰囲気を持ち、日本の伝統文化を象徴する楽器として、現代にまでその美しい音色を伝えています。

参考文献

東儀俊美『雅楽神韻』邑心文庫、1999年
東儀俊美『雅楽縹渺』邑心文庫、2002年
東儀秀樹『雅楽』集英社、2000年

関連項目

御神楽
雅楽
和楽器

外部リンク

文化デジタルライブラリー (独立行政法人 日本芸術文化振興会)
日本の伝統音楽 楽器編〈楽器図鑑〉 - 和琴の音、写真などを視聴できます。
* 4つの雅楽 - 日本の伝統音楽 歌唱編〈御神楽〉 - 和琴を含む奏楽を視聴できます。

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