柔道整復術

柔道整復術

柔道整復術は、日本の伝統的な治療技術であり、柔術の活法を応用したものです。骨、関節、筋肉、腱、靭帯などが原因で発生する、骨折、脱臼、捻挫、挫傷、打撲などの損傷に対し、手術をしない「非観血的療法」という独特の手技を用いて、整復や固定を行い、人間の持つ自然治癒能力を最大限に発揮させることを目指します。

歴史

柔道整復術のルーツは、戦国時代の武術に遡ります。当時の武術書には、敵を殺傷する「殺法」と、外傷を治療する「活法」の記述が見られます。これらのうち、活法が発展し、現在の柔道整復術へと繋がったと言われています。

江戸時代に入ると、武芸者が道場を構えるようになり、道場生の怪我を治療できる技術が道場主に求められる要素となりました。この頃、三浦楊心、吉原元棟、秋山四郎兵衛義時、二宮彦可、各務文献、華岡青洲、高志鳳翼、名倉直賢、磯又右衛門柳関斎源正足、斎藤玄逸といった人々が柔道整復術の体系化に貢献しました。

海外では、アンブロワーズ・パレが著した外科書『パレ大全』が広まり、オランダで翻訳されたものが日本にも伝わりました。日本では、楢林鎮山が『紅夷外科宗伝』として翻訳し、さらに『整骨書』や二宮彦可の『正骨範』が出版され、骨折や脱臼の治療方法が解説されました。これらの流れは、柔道整復術にも影響を与えています。

明治維新後、西洋医学が主流となる中、1881年の漢方医学廃止によって、接骨術は顧みられなくなりました。しかし、柔道家や柔術家からの要望を受け、1920年に柔道整復術として公認されました。その技術を持つ者は柔道整復師として認定され、柔道家、柔術家の収入源となりました。1970年には柔道整復師法が成立し、1989年の改正で教育内容が充実、1993年には初の国家試験が実施され、現在に至ります。

施術の特徴

柔道整復術の施術には、以下のような特徴があります。

受身の重視: 柔道では、脱臼や骨折、捻挫などの怪我を負う割合が多いため、柔道整復術は、柔道の技と表裏一体の関係にあります。
道場との関係: 昔は柔術道場の隣に接骨院があることが多く、道場主が柔道整復術を身につけて、道場経営の余技として接骨院を営んでいました。
スポーツ経験: 施術者は、スポーツ経験や伝統の技によって、患者を早く使える状態に戻すことができます。
資格: 現在では、柔道経験と柔道整復師の資格は関係ありませんが、養成施設では柔道の実技を必須授業としてカリキュラムに組み込んでいるところもあります。
医業類似行為: 柔道整復は、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうと並んで医業類似行為の一つとされています。
独自の解釈: 柔道整復分野における捻挫と挫傷の概念は、一般医学とは異なる独自の解釈がされており、医療間のコミュニケーション疎通性を欠くことが指摘されています。

柔道整復術は、日本の伝統に根ざした独自の治療法であり、その技術は長年にわたって受け継がれ、発展してきました。

関連項目

柔道整復師法
医業類似行為
手技療法
按摩
鍼
灸
代替医療一覧
柔道整復師養成施設
天神真楊流
楊心流
真之神道流
気楽流
日本武道医学
中山清

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