柘植の飛猿

柘植の飛猿（つげのとびざる）

『水戸黄門』に登場する、謎多き忍者「柘植の飛猿」。佐々木助三郎や渥美格之進とは異なり、特定のモデルは存在しないオリジナルキャラクターです。全シリーズを通して野村将希さんが演じ、その屈強な肉体と、時に見せるコミカルな一面で、多くのファンを魅了しました。

光圀一行に加わるまで

飛猿が登場したのは、第17部で起こった鳥羽藩のお家騒動でした。伊賀から来た飛猿一族は、鳥羽藩城代家老の本多左京に恩義を感じており、光圀一行を狙う黒谷の道鬼一味に潜入。騒動解決後、その実力を認められ、光圀一行に加わることになります。

当初、飛猿はかげろうお銀に、かつての相棒・煙の又平の仇と誤解されていました。しかし、道鬼との戦いを通じて誤解は解け、お銀との間に強い絆が生まれていきます。

飛猿の人物像

飛猿は、屈強な肉体と優れた運動能力を持つ、頼りになる存在です。肉弾戦を得意とし、敵を倒す際には壁を破壊して登場するなど、豪快な一面も持ち合わせています。初期の頃は忍者刀を使用していましたが、次第に素手での戦いがメインとなりました。牢屋に捕らえられた人を助ける際には、力ずくで牢の鍵や格子を破壊することも厭いません。

忍具と変装

第18部からは、独自の猿面型の小道具を使用するようになります。これは、弥七の風車と同様に、武器や投げ文の手段として活用されました。普段は「越中富山の薬売り」として各地を巡り、情報収集を行っています。薬売りの姿は、単なる偽装ではなく、実際に薬の知識も持ち合わせており、旅の途中で八兵衛に薬を処方したり、手当てをすることもあります。

お銀が変装して諜報活動を行う際には、飛猿がサポート役を務めることが多く、天井裏から眠り薬を仕込むなど、連携プレーで悪事を暴きます。お銀とは対照的に、飛猿が変装することは稀ですが、スピンオフ作品『水戸黄門外伝 かげろう忍法帖』では、村人や炭鉱夫に変装する珍しい姿を見ることができます。

人間関係

お銀とは対等な関係で、ピンチの際には互いに助け合う、信頼できるパートナーです。一方、八兵衛に対しては敬語で話すなど、年長者を敬う一面も持ち合わせています。光圀一行が水戸・西山荘へ帰ると、飛猿もまた、故郷である柘植の里へと帰っていきます。

その他

飛猿を演じた野村将希さんは、第17部から第28部までレギュラー出演し、その間、一人二役を演じたことは一度もありません。また、ゲスト出演の経験もない、珍しいケースです。当初は、刺客仲間のくれないお蓮と共にクレジットされていましたが、後にレギュラーとしてクレジットされるようになりました。

飛猿の登場は、弥七の負担を軽減する目的もありました。それまで、一行が窮地に陥った際の最後の切り札は弥七であることが多かったのですが、飛猿の加入により、飛猿が活躍する場面も増えました。

足が速く、運動神経も抜群で、鉄砲や乗馬の腕前もかなりのものです。第26部では、自身の故郷である柘植の里が舞台となり、かつて恋仲だったくノ一の沙耶が登場しました。

長期に渡って同一の俳優が演じたキャラクターとしては、うっかり八兵衛、かげろうお銀、疾風のお娟と並び、数少ない存在です。2015年のスペシャルでは、八兵衛やお銀が登場しなかったため、登場キャラクターの中で唯一、初代俳優が演じるキャラクターとして、重鎮のような風格を漂わせていました。

飛猿は、『水戸黄門』に欠かせない、魅力的なキャラクターの一人です。その活躍は、多くの視聴者の記憶に刻まれています。

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