柳 (松型駆逐艦)

駆逐艦「柳」：太平洋戦争末期の激動を生き抜いた駆逐艦の生涯

「柳」は、日本海軍の駆逐艦であり、松型（丁型）駆逐艦の14番艦として建造されました。艦名は、日本海軍において2代目となります。本稿では、その波乱に満ちた艦歴を詳細にたどり、太平洋戦争末期の激戦を生き抜いた「柳」の生涯について考察します。

建造と初期の活動

「柳」は1944年8月20日に藤永田造船所で起工、同年11月25日に進水しました。艦長に任命された大熊安之助少佐は、以前駆逐艦「五月雨」と「初春」の艦長を務めており、「初春」沈没直後には「柳」の艤装員長に就任、建造現場である藤永田造船所に赴任していました。

1945年1月18日、ついに「柳」は竣工し、呉鎮守府に籍を置きました。興味深いことに、水雷長の野村治男中尉は戦艦「武蔵」から、航海長の長山兼敏中尉は戦艦「金剛」から配属されるなど、艦長を含む多くの将校が過去に艦の沈没を経験していました。竣工後、「柳」は第十一水雷戦隊に編入され、大阪から瀬戸内海へと回航されました。竣工が二日遅れた「橘」と行動を共にすることが多かったです。

同年3月15日、柳、椿、桜、楢、欅、橘の松型駆逐艦複数隻によって第五十三駆逐隊が編成されました。3月19日には呉軍港空襲で対空戦闘を行い、その後は沖縄水上特攻作戦に参加する予定の第十一水雷戦隊と共に訓練に従事しましたが、作戦には参加しませんでした。大熊艦長は、戦艦「大和」の有賀幸作艦長から慰めの言葉をかけられたと伝えられています。

終戦間際の激戦と損傷

4月7日以降は第三十一戦隊の指揮下に入り、人間魚雷回天の目標艦として活動しました。5月7日には「橘」と共に大湊警備府部隊に編入され、大湊へと回航されました。5月14日、周防灘姫島沖でアメリカ軍機と交戦し、損害を受けました。その後、関門海峡の掃海を経て日本海へ移動し、5月21日に大湊に到着しました。津軽海峡での対潜警戒任務に従事する傍ら、6月11日には「橘」と共に大湊を出港し、損傷した海防艦「八丈」の護衛を兼ねて舞鶴に向かいました。

7月14日、日本本土への攻撃作戦を行っていたアメリカ軍の空襲を受けました。僚艦「橘」もこの空襲で沈没しました。「柳」も空母「エセックス」艦載機の空襲を受け、艦尾を切断、舵機室と推進機能を失う大きな被害を受けました。戦死者22名、負傷者60名という大きな損害を出し、航行不能となりました。地元住民によって救助され、曳航によって大湊基地に戻りましたが、8月9日には大湊空襲にも遭い、再び損傷を受けました。

終戦後とその後

終戦後、「柳」の船体は北九州の軍艦防波堤に使用されたとする説がありますが、実際には初代「柳」と秋月型駆逐艦2隻が使用されており、「柳」（2代目）は1946年10月から翌年5月にかけて解体されました。1952年12月には、むつ市の常楽寺に「常磐」と「柳」の慰霊塔が建立され、現在も慰霊祭が行われています。

「柳」の艦歴は、太平洋戦争末期の激戦を象徴するものであり、多くの犠牲を払いつつも最後まで戦い続けた日本の海軍の艦艇の一つとして、その歴史は記憶にとどめられるべきでしょう。 その短いながらも激動の生涯は、戦争の残酷さと、人々の不屈の精神を物語っています。数々の戦闘を経験した「柳」の艦歴は、歴史の重要な一部として語り継がれていくことでしょう。

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