柳妻麗三郎

柳妻麗三郎：多才な芸歴を誇る「マキノのチャップリン」

柳妻麗三郎（やなづま れいざぶろう）は、1898年3月9日に熊本県熊本市で生まれ、1988年または1989年に没した日本の俳優、芸人です。彼は、奇術師、照明技師としても活動し、様々な顔を持っていました。奇術師時代には松旭斎天秀（しょうきょくさい てんしゅう）を名乗り、本名は高見嘉一（たかみ かいち）でした。一時期はチャーリー高見（チャーリー たかみ）とも名乗りました。

多彩な才能を開花させた黎明期の映画人

柳妻は「マキノのチャップリン」と呼ばれ、その卓越した演技力で観客を魅了しました。また、「昭和の鳥人」こと高木新平に軽業を指導したことでも知られています。さらに、「ノッポさん」として親しまれた高見映の実父でもありました。

熊本から映画界へ

1898年、熊本市二本木町で高見嘉太郎の長男として生まれた柳妻は、地元の芝居小屋「東雲座」で照明係や設備営繕の技術職に従事しました。その後、全国を巡業していた奇術師、松旭斎天一に師事し、奇術師「松旭斎天秀」として活動を開始しました。1914年には、京都の日活関西撮影所で牧野省三が製作する新劇に出演し、天一一座を離れて同撮影所で照明技師を務めました。1920年には同撮影所の演技学校で高木新平に軽業を指導しています。

マキノ・プロダクションでの活躍

1925年、牧野省三がマキノ・プロダクションを設立すると、柳妻もこれに参加。『奇傑鬼鹿毛 第二篇』で「浮鮫源三郎秀春」役を本名である「高見嘉一」で演じました。同作のプロモーションでは、主演の武井龍三が「鳥人」、平八郎が「巨人」、高見（柳妻）は「豹人」というキャッチフレーズがつけられました。同年公開の『駕屋の先生』からは、芸名を「柳妻麗三郎」に改めました。1926年には『活動狂時代』で「チャップリンに似た男」を演じ、子役スター松尾文人とのコンビ「大チャプ小チャプ」として人気を博しました。また、『照る日くもる日』シリーズでは「猿の源次」役を演じ、彼の代表作となりました。

マキノ解散後から晩年まで

1929年に牧野省三が亡くなり、マキノ・プロダクションが新体制となると、柳妻は嵐寛寿郎らとともに「俳優部男優」として名を連ねました。しかし、1931年にマキノ・プロダクションが解散すると、柳妻も退社しました。

その後、1934年に高見映が誕生。柳妻は「チャーリー高見」として、チャップリンの物真似を映画の幕間に演じるなど、芸人としての活動を続けました。戦後は芸能界に復帰し、1953年には映画『夫婦』に出演。晩年は、東京都三鷹市で静かに暮らしていたと伝えられています。

柳妻麗三郎の遺産

柳妻麗三郎は、黎明期の日本映画界を支えた重要な人物の一人です。奇術師、照明技師、俳優、芸人として多彩な才能を発揮し、多くの人々に笑顔と感動を届けました。彼の功績は、映画史に深く刻まれています。

主な出演作品

奇傑鬼鹿毛 第二篇 (1925)
駕屋の先生 (1925)
活動狂時代 (1926)
照る日くもる日シリーズ (1926-1927)
忠魂義烈 実録忠臣蔵 (1928)
三朝小唄 (1929)
* 夫婦 (1953)

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