松旭斎天一

初代松旭斎 天一について

初代松旭斎天一（しょうきょくさい てんいち、1853年3月11日 - 1912年6月14日）は、日本の奇術界で非常に重要な存在でした。彼は福井城下（現在の福井県福井市）に生まれ、若い頃の本名は服部 松旭（はっとり しょうきょく）であり、幼名は牧野 八之助（まきの はちのすけ）でした。

人物背景

天一は「日本近代奇術の祖」「松旭斎派の祖」として広く知られています。彼の弟子として有名な人物には、松旭斎天二（二代目松旭斎天一）や松旭斎天勝、松旭斎天洋、松旭斎天秀（柳妻麗三郎）がいます。天一の父は剣術師範の牧野海平で、ポジションは福井藩の国家老・狛家の家臣として知られていました。しかし、家が断絶したことで、彼は1860年に阿波在住の叔父の管理下に置かれることになります。両親の早世により、彼は得度し、瑞山と名乗りながら様々な寺を転々としました。

天一は維新期に淡路で浮れ節の前座として初めての公演を行い、続いて土佐の剣渡りの太夫として活動しました。しかし、紀州での火渡りに失敗し、芸名を立川松月とした後、音羽瀧寿斎と改名。彼は意欲的に新たな芸を追求しました。

奇術師としてのキャリア

1876年に阿波に戻った彼は、服部松旭として名乗り、戸籍も取得しました。その後、大阪での見世物小屋で西洋手品を見て強い感銘を受けます。これにより、西洋人のジョネスと知り合い、西洋の手品を学ぶ機会を得ました。1878年にはジョネスと共に上海へ巡業し、様々な手品技術を習得します。

帰国後、彼は大阪千日前の興行師、奥田弁次郎の手を借りて、「イギリス帰り」と偽り手品を行い、この頃「松旭斎天一」として絶大な人気を得ました。1880年には「天一一座」を立ち上げ、「切支丹バテレンのハリツケ」や大礼服姿の「陰陽水火の遣い分け」といった演目で評判を呼びました。

その後、結婚を経て阿波に戻り、さらなる人気を博す「サムタイ」といった演目を上演しました。1885年頃には道頓堀の角座、東京浅草の文楽座（文楽亭）での公演を行い、当時の最高額である一円の入場料を設定しました。天一はスライハンドよりも大掛かりな奇術を得意としており、「十字架の磔」や「噴水自在の術」、「大砲芸」など多彩な演目を披露しました。また、「手妻」「放下」「手品」といった技術の総称として「奇術」という言葉を広めることにも寄与しました。彼は台覧公演や天覧公演を頻繁に開催し、その影響力を拡大しました。

晩年とその功績

彼は1900年に一座を解散し、その後は弟子の天二や天勝とともに欧米を巡業しました。著書には「西洋手品種明し」があり、彼の知識の広さを示しています。天一の業績は今も評価され続けており、2012年の8月には死後100年を記念する奇術大会「天一祭」が故郷福井市で開催されました。これに伴い、天一が生まれた福井市の交差点には記念碑も建立され、彼の影響力を噛みしめる機会を提供しています。

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