柳沢遺跡

柳沢遺跡：弥生時代の息吹を伝える複合遺跡

柳沢遺跡は、長野県中野市柳沢に位置する複合遺跡です。千曲川東岸、夜間瀬川との合流点北側に広がり、南北800メートル、東西600メートルに及ぶ広大な範囲に、縄文時代、弥生時代、平安時代の集落跡が確認されています。

発見の経緯と調査

柳沢遺跡が注目を集めるきっかけとなったのは、2007年（平成19年）に長野県埋蔵文化財センターが実施した発掘調査です。国土交通省千曲川河川事務所による堤防整備工事に先立ち行われたこの調査で、弥生時代の銅鐸が発見されました。2006年（平成18年）から2008年（平成20年）にかけての築堤地点における発掘調査では、縄文時代から平安時代にかけての遺構・遺物が確認され、特に弥生時代に埋納された銅鐸や銅戈は、全国的な注目を集めました。長野県埋蔵文化財センターによる発掘調査は、2020年（令和2年）現在も継続されています。

遺跡の概要

柳沢遺跡からは、竪穴建物跡、礫床木棺墓群、土器棺墓、青銅器埋納抗、土器廃棄土坑、水田跡と溝跡など、弥生時代の多様な遺構が発見されています。特に重要なのは、青銅器埋納抗から出土した銅鐸5点と銅戈13点を含む212点の弥生時代遺物群です。これらの青銅器は、東日本で初めて一括埋納されたものとして、2014年（平成26年）8月21日に国の重要文化財に指定されました。

弥生時代の遺構・遺物

竪穴建物跡: 中期後半のもの5棟、後期のもの1棟が確認されています。
墓: 礫床木棺墓群が2箇所、土器棺墓が1基見つかっています。
青銅器埋納抗: 1基。栗林式と吉田式という土器の形式が併行していた時期に埋納されたと考えられています。
土坑: 長方形の土坑は、土器を廃棄するために使われたと考えられています。
水田跡と溝跡: 溝跡は水田用水として利用され、住居域との境界としての役割も果たしていたと考えられています。
土坑群と溝跡: 焼土跡2基、土器集中箇所4か所が確認されています。

出土した主な遺物

土器: 栗林式、吉田式、箱清水式土器が出土。VI層が遺物包含層となっています。
石器・石製品: 管玉、勾玉などが出土しています。
青銅器: 銅鐸5点、銅戈13点が出土。国の重要文化財に指定されています。

柳沢遺跡が語る弥生時代

柳沢遺跡から出土した遺構や遺物は、弥生時代の集落の様子や、当時の人々の生活、文化、精神世界を理解するための貴重な資料となります。特に、青銅器の埋納は、当時の社会における祭祀や信仰を反映していると考えられています。また、水田跡の発見は、弥生時代における稲作の普及を示す証拠として重要です。

文献に見る柳沢遺跡

柳沢遺跡については、『下高井郡誌』（1922年）、『下高井』（1953年）、『中野市誌』（1981年）、『柳沢区誌』（1992年）などの文献にも記述があり、古くからその存在が知られていたことがわかります。

柳沢遺跡は、北信濃における弥生文化を代表する重要な遺跡の一つです。今後の調査によって、さらに多くの発見が期待されています。

参考文献
『掘るしんin中野』長野県埋蔵文化財センター、2018年3月3日
* 『北信濃柳沢遺跡の銅戈・銅鐸』信濃毎日新聞社、2008年6月10日

もう一度検索