柳瀬ダム

柳瀬ダムの概要

柳瀬ダム（やなせダム）は、愛媛県四国中央市金砂町小川山地に位置する重要なダムです。このダムは吉野川水系の銅山川に建設されており、ダムによって形成された人造湖は「金砂湖」（きんしゃこ）と呼ばれています。また、金砂湖は金砂湖県立自然公園の一部を形成しています。柳瀬ダムは国土交通省の直轄ダムですが、2021年4月からは管理を水資源機構へ委託している点も特徴です。

銅山川分水計画の始まり

柳瀬ダムの建設は、水供給の緊急なニーズに応えるために発展した「銅山川分水計画」を背景にしています。愛媛県に位置する宇摩地域は、温暖な瀬戸内海気候の影響で慢性的な水不足が問題とされていました。1855年、宇摩郡の庄屋連合が今治藩に対し銅山川疏水事業の申請を行ったのが、この計画の始まりです。1924年には「銅山川疏水事業期成同盟会」が設立され、この地域の水の確保が急務であることが広く認識されるようになりました。1930年代には愛媛県が柳瀬ダムの計画を発表し、灌漑と発電を目的とした分水事業が本格化しましたが、下流の徳島県の反対に直面しました。

多目的ダム化とダムの完成

第二次世界大戦後、内務省は柳瀬ダムを洪水調節機能を備えた多目的ダムとして再評価し、1948年から建設が始まりました。1953年にはダムが完成し、その年に銅山川分水の仮通水も実施されました。このダムの構造は重力式コンクリートダムで高さは55.5メートルに達し、洪水調節や灌漑、上水道、工業用水、発電という多様な目的を持っています。従来の条件として、下流への河川維持用水を放流する義務もありましたが、後に別のダムの完成に伴う愛媛分水事業の分担によりその義務は廃止されました。

金砂湖の由来と地域への影響

金砂湖という名称は、千年以上前の孝徳天皇の時代にこの地域で砂金が採取されていたことに由来しています。金砂湖は地域の水供給の中心となり、銅山川分水の重要な水源となりますが、そのダムの建設には地域住民の移転をも伴い、柳瀬集落にあたる160戸の住宅と169ヘクタールの農地が水没するという影響をもたらしました。

環境保護と観光地としての金砂湖

金砂湖は1954年に富郷渓谷と共に県の名勝に指定され、1961年には金砂湖県立自然公園として保護されています。その後、三島嶺南鳥獣保護区にも指定され、自然環境の保護が進められています。金砂湖は特にバス釣りで有名であり、かつて日本最大のブラックバスが釣れた記録もあり、全国的に知られています。現在、金砂湖畔には公園が整備されており、レジャー活動の拠点として利用されています。

まとめ

柳瀬ダムは、愛媛県の水供給を支える重要な施設であり、歴史的な計画と地域の生活に深く根ざしています。今後も地域の水資源保護や観光地としての発展が期待されるでしょう。

もう一度検索