柿 (橘型駆逐艦)

日本海軍駆逐艦「柿」：波乱に満ちた艦歴

「柿」は、日本海軍の駆逐艦です。橘型（改松型）に分類され、舞鶴海軍工廠で建造されました。艦名は植物の柿に由来し、同名の駆逐艦としては2代目となります。本艦は、太平洋戦争末期の激動の時代を生き抜き、数々の困難に見舞われた艦として知られています。

竣工から事故発生まで

竣工後、「柿」は第十一水雷戦隊に編入され、瀬戸内海への回航任務に就きました。しかし、その途上、潮岬沖で缶管破裂という重大な事故が発生します。幸い乗員の死傷者はありませんでしたが、航行不能となり、「萩」によって大阪の造船所へ曳航されました。

空襲被害と長期修理

修理中の3月19日、アメリカ軍機の空襲を受け、戦死者2名、負傷者6名（駆逐艦長を含む）を出すという痛ましい事態が発生しました。船体にも若干の損傷を受けました。修理は当初4月完了予定でしたが、缶管に新たな亀裂が発見され、長期化しました。

瀬戸内海から日本海へ、そして終戦

修理完了後、「柿」は瀬戸内海で訓練に従事していましたが、第十一水雷戦隊は機雷投下作戦の安全確保のため、日本海側へ移動することとなります。舞鶴に到着した「柿」は、舞鶴鎮守府から空襲の際に標的となりやすいとの理由で、舞鶴以外の場所への移動を要請され、小浜湾へ移されました。7月15日には特殊警備艦に指定され、小破の状態のまま終戦を迎えました。10月5日には除籍されました。

終戦後と処分

終戦後、「柿」は特別輸送艦に指定され、復員輸送に従事しました。その後、特別保管艦を経て、1947年7月4日、賠償艦としてアメリカに引き渡されました。そして、同年8月19日、北緯35度29分、東経123度35分の地点で標的艦として処分されました。その短い生涯は、数々の困難と戦争の悲劇を象徴するものでした。

歴代艦長

「柿」の歴代艦長は以下の通りです。

艤装員長：濱崎長太郎 少佐（1945年2月5日 - 1945年3月5日）
駆逐艦長/艦長：濱崎長太郎 少佐（1945年3月5日 - 1945年11月27日）
艦長：田中嘉平治 大佐/第二復員官/第二復員事務官/復員事務官（1945年11月27日 - 1946年12月30日）
（兼）艦長：菊地正秋 復員事務官（1947年5月26日 - 、本職：横須賀管船部勤務）

参考文献

海軍歴史保存会『日本海軍史 第7巻』（第一法規出版、1995年）
片桐大自『聯合艦隊軍艦銘銘伝』（光人社、1993年）
田村俊夫「米国に引き渡された賠償艦艇の最期について」『帝国海軍 真実の艦艇史2』（学習研究社、2005年）
外山操『艦長たちの軍艦史』（光人社、2005年）
歴史群像編集部 編『松型駆逐艦』（学習研究社、2003年）
アジア歴史資料センター（公式）（防衛省防衛研究所）
* 『昭和19年6月1日～昭和20年6月30日　第11水雷戦隊戦時日誌（6～8）』。

本記事では、「柿」の艦歴を可能な限り詳細に記述しました。しかし、資料の不足により、不明な点も残されています。今後の研究により、より詳細な事実が明らかになることを期待しています。

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