特殊警備艦

特殊警備艦

特殊警備艦とは、日本海軍が太平洋戦争の末期に使用していた艦艇群を指します。この艦艇群は、主に燃料不足の影響で外海へ出航が困難な大型艦艇、つまり戦艦や航空母艦、重巡洋艦などが本土決戦に備えた防衛戦略の一環として、各鎮守府の沖に繋留されていました。これにより、アメリカ軍の侵攻や空襲に対して迎撃する役割を果たそうとしましたが、多くの艦艇が戦闘によって沈められるか、深刻な損傷を受けました。

時代背景

1944年10月、レイテ沖海戦において、日本海軍はアメリカ海軍に対して壊滅的な被害を受け、連合艦隊の組織的な作戦能力は失われました。この時期、日本とアメリカの双方が本土決戦を想定し、その準備を進める状況にありました。日本海軍は海軍総隊司令部を設立し、すべての艦隊を統一的に指揮することを目指しました。しかし、多くの艦艇や資源を失っていた日本海軍は、特攻兵器や小型艦艇に依存せざるを得ない状況に陥りました。

艦艇の運用と改造

行動不可能になった大型艦艇は、連合艦隊の指揮下から外れ、各鎮守府の予備艦として運用されることになりました。これらの艦艇は、主に副砲や対空兵装などを陸上に移動させた後、沿岸防備を担う鎮守府警備艦へと改編されました。その後、1945年6月には特殊警備艦として、米軍の上陸に備えるための役務変更が行われました。

この艦種変更にあたっては、艦艇を隠すための迷彩塗装や木々の設置といった工事が行われましたが、このような擬装は多くの場合、十分な効果を発揮することができず、結果として多くの艦艇が撃沈または大破しました。また、この擬装手法の効果について、日本海軍の関係者は「無意味」であると認識していた一方で、アメリカ軍側には「効果的」と評価される意見も存在しました。

特殊警備艦の具体例

戦艦

• - 長門: 横須賀港に繋留され、艦艇の迷彩塗装が施されました。終戦時には行動可能な唯一の戦艦でしたが、最終的には原子爆弾実験のため沈没しました。
• - 伊勢: 北号作戦後に予備艦となり、呉軍港空襲で大破。最終的にはスクラップにされました。
• - 日向: 呉軍港近くに停泊していましたが、米軍の攻撃によって大破し、最終的に沈没しました。
• - 榛名: 複数回の空襲を受け、大破しました。

空母

• - 天城: 途中で転覆し、その後解体されました。
• - 葛城: 輸送艦として重要な役割を果たしましたが、戦時中の活躍は目立ちませんでした。

その他の艦艇

• - 青葉（重巡洋艦）や大淀（軽巡洋艦）なども大破して沈没。
• - 駆逐艦の冬月（損傷）や涼月（海上固定砲台として利用）などが存在しました。

このように特殊警備艦は、戦局の変化と日本海軍の戦闘力の低下を反映した艦艇群であり、艦隊の運命を大きく左右する役割を果たしました。彼らの存在は、日本の海戦史の中で重要な一ページを形成しています。

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