栃木・妻と知人殺害事件

栃木・妻と知人殺害事件の概要

1988年から1989年にかけて、栃木県で発生した連続殺人事件。この事件では、男Nが、別れた妻Cと知人男性Eを相次いで殺害しました。Nは、暴走族で身につけた残虐なリンチの手法を用いて、Cを窒息死させ、Eには監禁、虐待を繰り返した末に殺害するという、極めて凶悪な犯行に及んでいます。

事件の経緯

Nは、元々暴力的な性格で、中学時代から父親をも恐れさせるほどでした。高校を中退後、非行を重ね、保護観察処分を受けるも、その間に自衛隊に入隊、しかしこれも性格が合わずすぐに除隊。その後、職を転々としていたNは、1986年に交通事故を起こし、さらに暴走族に加入。タバコの火を押し付けるといった残虐なリンチを繰り返すようになります。執行猶予中にこの連続殺人事件を起こしました。

C殺害事件

1988年、NはCと知り合い結婚するも、Nの嫉妬深く束縛的な性格と暴力が原因でCはNのもとを去ります。その後もNは復縁を迫りますが、Cが拒否したため、逆上したNはCの首を絞めて殺害しました。その後、Nは父親に頼み、Cの遺体を実家の花壇に埋めました。

E殺害事件

C殺害から約1年後、NはEと知り合います。NはEを虐待の対象とし、監禁、殴る蹴るといった暴行を加え続けました。熱湯を浴びせる、棒を肛門に突き入れるなどの行為もしていました。Eは衰弱し、自力で歩くことも困難な状態に陥りますが、Nは病院に連れて行こうとはしませんでした。最終的に、Nは衰弱したEを浴室で殴打し死亡させました。その後、Nは父親に頼み、Eの遺体も実家の敷地内に埋めさせました。

事件後のNの行動

Nは、これらの凶行後も、罪の意識を持つことなく、父親に命じて遺体を焼却させました。さらに、Cが家出したかのように偽装したり、Eの生存を偽装したりするなど、証拠隠滅工作を行っていました。その後、Nはヘルスマッサージ業を始めますが、そこでも従業員に同様の虐待を繰り返していました。

捜査と裁判

1996年、Nは従業員への傷害事件で逮捕されます。その後、CとEの殺害事件も発覚し、Nは殺人罪で起訴されました。裁判では、NはC殺害とE殺害の殺意を否認しましたが、宇都宮地方裁判所はNに死刑判決を言い渡しました。Nは控訴しましたが、東京高等裁判所、最高裁判所も死刑判決を支持し、Nの死刑が確定しました。

Nの生い立ち

Nは、1966年生まれ。母親はNが中学生の時に病死。幼少期から暴力的な性格で、周囲を力で支配しようとする傾向がありました。高校を2度退学になるなど、問題行動が目立っていました。

Nの犯行の特徴

Nの犯行の特徴は、以下の点が挙げられます。

暴走族で身につけた残虐なリンチの手法を用いる
支配欲が強く、相手を自分の意のままに操ろうとする
罪の意識が薄く、反省の態度を示さない
連続殺人の後も、同様の虐待を繰り返す

類似事件との比較

本事件は、栃木リンチ殺人事件、女子高生コンクリート詰め殺人事件、北九州監禁殺人事件など、他の凶悪事件との類似性が指摘されています。これらの事件は、加害者が被害者を支配下に置き、残虐な暴行を加え、最終的に殺害するという点で共通しています。

裁判の争点と判決

裁判では、Nの殺意の有無が争点となりました。検察側は、NがCとEを殺害したと主張。弁護側は、C殺害については動機が不明確であり、E殺害については殺意がなかったと主張しました。しかし、裁判所は、Nの殺意を認定し、その残虐性を考慮して死刑判決を下しました。

現在

Nは、現在死刑囚として東京拘置所に収監されています。

参考文献

宇都宮地方裁判所刑事部判決 2001年12月18日 裁判所ウェブサイト、平成11年(わ)178号、『傷害、殺人被告』。
最高裁判所第一小法廷 判決 2006年（平成18年）10月12日 裁判所ウェブサイト、平成15年（あ)2181号、『傷害、殺人被告事件』「死刑の量刑が維持された事例（栃木・妻、知人連続殺人事件」。

もう一度検索