栃本関所

栃本関所について

栃本関所（とちもとせきしょ）は、武蔵国と甲斐国の境にあたる雁坂峠を越えて通じる秩父往還（別名、甲州裏街道）に位置する関所の一つです。この関所は戦国時代に武田氏によって設けられ、その後、江戸時代には関東郡代の伊奈氏が幕府の関所として整備しました。別名として「菅平関」とも呼ばれていますが、これは栃本関所が菅平宿に近接しているためのものです。家庭の財産を守る場所が必要だとされ、国の史跡としては「栃本関跡」として指定されています。

概要

栃本関所は、武蔵と甲斐を結ぶ重要な通路であり、現在の埼玉県秩父市大滝村栃本に相当します。この関所は、周囲の自然の障害を利用して、地形の良好な場所に設置され、効果的な警備が行われていました。栃本関所の番頭を務めていたのは大村家でした。

戦国時代において、栃本関所は敵の侵攻を防ぐための要衝としての役割を果たし、江戸時代には法と秩序を保つための警備の役割が中心的な存在となりました。特に、「入鉄炮出女」の監視などが重要視され、周辺の金山に対する監視も行われていました。

設置と管理

栃本関所の設置は戦国時代、武田信玄によるものとされています。当初は軍事的な目的で設けられ、後に江戸時代に伊奈氏によって正式な関所としての役割が与えられました。関所の警備体制は、延享元年（1744年）には二人扶持が与えられるようになり、関守としての任務が強化されました。

また、寛永8年（1631年）には、武州麻生村と甲州河本村に加番所が設置され、栃本関所の警備がさらに強化されました。これにより、周辺の治安が保たれる一方で、番所制度が整備され、麻生加番所と川浦加番所が設けられました。

通行と監視

栃本関所では、明六つから暮六つまでの間で、一般通行が許可されていましたが、女性の通行は原則として禁止されていました。しかし、古大滝村及び近隣の村からの特定の巡礼者には特別に通行が許可されることがありました。通行の際は手形の受け渡しが行われ、手続きを経ることで武州から甲州へと移動可能でした。

この関所の機能は、国境を横断する荷物に対する監視や、銃器や人の移動に対する厳重な取り締まりがありました。特に、金山の監視については特筆すべき点で、幕府からの指示により、荷物の検閲が強化されました。

廃止と史跡指定

栃本関所は慶応4年（1868年）に廃止され、その後も口留番所は残されました。明治2年（1869年）に番所は正式に廃止され、関門も取り払われました。1970年にはその跡地が国の史跡として指定され、重要な文化財としての価値が認められました。

現在、「栃本関跡」は江戸時代の関所とその関係者の生活様式を伝える貴重な遺構として保存されています。関所の跡は、当時の構造や役宅の形態を知る手がかりとなります。栃本関所の存在を通じて、当時の交通と交易の重要な役割を見つめることができます。

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