栗本丹洲

栗本 丹洲（くりもと たんしゅう）

栗本丹洲は江戸時代の後期に活躍した医師兼本草学者であり、特に著書『千虫譜』での業績が評価されています。彼は江戸幕府の奥医師として、4代目にあたる栗本瑞見の家系に属し、その親から本草学の基礎を学びました。生涯を通じて多くの図譜を残し、自然科学に貢献しました。

生涯

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宝暦6年（1756年）の7月27日、江戸の神田紺屋町で、著名な本草学者田村藍水の第二子として生まれました。幼名は新次郎です。1778年には奥医師の栗本昌友（3代目栗本瑞見）の婿養子として家業を継ぎ、「元格」と名乗りました。彼は1781年に将軍徳川家治にお目見えし、御目見の後は、家治の側室である蓮光院の治療を担当しました。その後、数度の昇進と降格を経て、1802年には異医師でありながら製薬所掛に就任しました。

彼は父昌友の死後、家督を相続し「瑞見」の名を受け継ぎます。さらに、オランダの商館長との対談を通じて、西洋医学との接触を持ちながら本草学への学問的情熱を深めていきました。丹洲は文化8年（1811年）に完成した『千虫譜』によって、日本の虫類に関する学問の発展に寄与しました。

『千虫譜』

『千虫譜』は、丹洲の名を高める重要な作品であり、江戸時代における日本初の虫類図譜とされます。この書は上下2巻からなり、240枚に及ぶ内容で構成されています。さまざまな生物が描かれており、虫類に限らず哺乳類や爬虫類の記載もあり、当時の生物観を反映しています。残念ながら原本は失われてしまいましたが、30点以上の転写本が現在も存在しています。

文化8年の序文により、その年が完成の年とされていますが、実際は1833年まで内容が補充され続けたため、厳密にはその年を完成年と呼ぶには難しい状況がありました。丹洲は他の図譜からの転写物を多く利用しており、内容には重複も見られます。これは、彼の著作が生涯を通じて少しずつ更新された影響と考えられています。

家族と影響

丹洲の実父である田村藍水も本草学者であり、兄の田村西湖も同様に学問に従事していました。言うまでもなく、彼の家系は学問の伝統が根付いていました。妻は栗本昌友の娘とされ、子供たちもそれぞれ独自の道を歩んでいます。

晩年には、1823年にシーボルトを訪問し、自らの著作物を贈呈するなど、国際的な交流にも意欲を示しました。彼は天保5年（1834年）に病によりこの世を去り、江戸の菩提寺に葬られました。その墓石には「故法印薬品鑑定瑞仙院楽我居士」と刻まれており、その後の医療や博物学に与えた影響を物語っています。

著作とその影響

栗本丹洲はただ単に医師としての仕事に留まらず、多くの生物に関する図譜を製作し、後世の科学者たちに多大な影響を与えました。彼の研究は、日本における自然科学の進展に寄与し、また後の博物学者たちに新たな道を示す賢人であったと言えるでしょう。

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