栗田健

栗田 健

栗田 健（くりた けん）は、1931年11月3日に東京都で生まれ、2022年1月に逝去した日本の著名な経済学者です。専門は労働経済学および社会政策分野に及び、長年にわたり明治大学を拠点として研究・教育活動を展開しました。同大学では教授として教鞭を執る傍ら、総長などの要職を歴任し、教育機関としての発展に多大な貢献をしました。また、社会政策学会をはじめとする多くの学術団体や公的機関においても重要な役割を果たしました。

学歴と初期のキャリア

栗田氏は、1950年に東京都立第三高等学校（現在の両国高校）を卒業しました。その後、横浜国立大学経済学部へ進学し、1954年に卒業しました。大学時代には長洲一二氏のゼミで経済学を学びました。さらに研究を深めるため、東京大学大学院社会科学研究科応用経済学専攻の修士課程に進み、1956年に修了しました。大学院では大河内一男氏の指導を受けました。博士課程では「イギリス労働組合の歴史的研究：組織形態分析」をテーマに研究を進め、1961年に課程を修了し、同年9月には経済学博士号を取得しました。

明治大学での軌跡

博士課程修了と同じ年の1961年、栗田氏は明治大学商学部の専任助手として採用され、教育者・研究者としてのキャリアをスタートさせました。翌1962年には専任講師に昇任し、1965年には助教授、そして1970年には教授へと順調に昇格しました。大学での教育・研究活動と並行して、学内運営にも深く関与しました。1969年には臨時学長室の専門員を1年間務め、1984年からは再び2年間、学長室専門員として大学の意思決定を支えました。大学院商学研究科委員長を1986年から2年間務め、1988年から4年間は一部教務部長として教育体制の整備に尽力しました。1994年からは商学部長として同学部の運営を率いました（1996年3月まで）。

そして1996年、栗田氏は学校法人明治大学の総長に就任しました。2期8年にわたり大学の最高責任者として、教育研究環境の向上や学園の発展のためにリーダーシップを発揮しました。2004年に総長を退任した後も、明治大学顧問、名誉教授として大学に貢献を続けました。また、明治大学での専任職務の傍ら、北海道大学、新潟大学、東京大学などで非常勤講師としても教壇に立ち、幅広い教育活動を行いました。

学外における活動と貢献

栗田氏は学術界および社会に対しても積極的に貢献しました。社会政策学会においては、1976年から1996年まで長期間にわたり幹事を務め、学会の運営を支えました。特に1978年までは同学会の年報編集委員長として、学術論文の刊行に尽力しました。さらに、1982年から1984年までの2年間は代表幹事として学会を牽引しました。1994年には同学会の学会賞選考委員長も務めています。

学術会議や公的な審議会においてもその専門知識が求められました。日本学術会議経済政策研究連絡委員会の委員を、1985年から3年間と1991年から3年間の二度にわたり務めました。また、1986年から1988年まで学術審議会の専門委員を務めました。高等教育の振興においても重要な役割を担い、1996年には社団法人日本私立大学連盟の常務理事に就任しました。1997年には財団法人大学基準協会の理事となり、大学の質保証に関わる活動に携わりました。文部省（現在の文部科学省）の大学設置・学校法人審議会においても委員として活躍し、1997年から2001年1月まで大学設置分科会委員を、2001年からは学校法人分科会会長を2002年4月まで務め、高等教育行政に貢献しました。

主な著作

栗田氏の研究成果は、多くの著書として発表されています。単著としては、イギリスの労働組合史を詳細に分析した『イギリス労働組合史論』（1963年、未来社）、現代の労使関係の構造に迫る『現代労使関係の構造』（1978年、東京大学出版会）、労働組合に関する体系的な記述を行った『労働組合』（1983年、日本労働協会）、そして日本の労働社会を多角的に論じた『日本の労働社会』（1994年、東京大学出版会）などがあります。また、共著として『戦後日本の労働調査』（1970年、東京大学出版会）、『現代資本主義と多元社会』（1979年、日本評論社）、『転換期における労使関係の実態』（1981年、東京大学出版会）、『社会政策s －現代の労働問題－』（1981年、有斐閣）、『現代イギリスの経済と労働』（1985年、御茶の水書房）、『社会・労働運動大年表』（1987年、労働旬報社）など、幅広いテーマの著作に貢献しています。

栄典

長年にわたる学術研究、教育、および社会への貢献が認められ、2011年4月には瑞宝中綬章を受章しました。

栗田 健氏は、経済学者として、特に労働経済学と社会政策分野における卓越した研究と、明治大学の教育・運営におけるリーダーシップ、そして学外での多岐にわたる活動を通じて、日本の学術界と高等教育の発展に重要な足跡を残しました。

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