大河内一男

大河内 一男

大河内 一男（おおこうち かずお、1905年1月29日 - 1984年8月9日）は、日本の著名な経済学者であり、社会政策を専門としました。彼は東京大学の総長を務め、名誉教授としても知られています。さらに専修大学の学長や日本学士院の会員としても活動し、経済学の発展に寄与しました。彼の業績の一つに、19世紀後半のドイツ歴史学派経済学に関する理論的な批判があります。

経歴

大河内は東京の下谷で生まれました。東京府立第三中学校を卒業後、旧制第三高等学校を経て東京帝国大学に入学。この大学では河合栄治郎教授のもとで学びました。卒業後、経済学部の助手としてキャリアをスタートさせましたが、1939年に平賀粛学の際、辞表を提出しました。しかし、平賀総長の慰留を受けて辞表を撤回し、その後、風早八十二と共に戦時中の生産力理論を提唱しました。

戦後は東京大学経済学部の教授として活動し、1946年から1949年には専修大学の経済学部長を兼任しました。1947年には専修大学の学長に就任し、その後、経済学博士号を取得しました。1962年から1968年にかけては東京大学の総長として在任し、その期間中に東大紛争が発生します。1968年11月には全学部長や評議員と共に責を取って辞任しました。

学界での活動

大河内は社会政策学会の代表幹事を1962年から1964年まで務め、1973年には世界平和アピール七人委員会の委員として活動しました。また、同年に設立されたラボ国際交流センターでは会長を務め、社会経済国民会議の議長としても活動を行いました。1984年8月9日、彼は両側性気管支肺炎のために亡くなりました。

受賞・栄典

大河内は1981年に叙勲一等授瑞宝章を受け、1984年には正三位に叙せられました。これらの栄典は、彼の学問的貢献と社会への影響を評価した結果といえるでしょう。

研究内容と業績

大河内の研究は主に社会政策に関するものであり、彼は歴史学派とマルクス[[経済学]]を批判し、国家学としての社会政策の理論確立に努めました。彼の提唱する大河内理論によると、社会政策は資本主義社会において労働力を保全し、または発展させるために不可欠であるとされます。具体的には、資本が労働力の数量を安定的に確保し、さらに労働者の社会的要求に応えることが必要だと指摘しました。

しかし、この理論は一部のマルクス主義者から批判され、生産力理論には「生産関係や階級闘争の視点が欠如している」との指摘がありました。そして、彼の理論は「社会政策＝労働政策」とされ、国家論としての理解が制限されているとの批判もありました。なお、この論争は「社会政策論争」として広く知られています。

家族・親族

大河内家は松平信綱の末裔で、彼の父は日本の速記史上重要な人物である大河内翠山（大河内発五郎）でした。長男の大河内暁男も経済史家として知られています。

エピソード

大河内は1964年の東京大学卒業式において、「肥った豚になるよりもやせたソクラテスであれ」とも言われる式辞を準備しましたが、実際にはこの言葉は読み飛ばされました。彼の言葉はジョン・スチュアート・ミルの言葉とされますが、後に誤報として広がりました。

大河内文庫

大東文化大学板橋図書館には、大河内一男とその家族の蔵書が「大河内文庫」として保管されています。

著作

大河内は数多くの著作や共編著を残しており、特に社会政策に関する研究は彼の学問的遺産として残っています。彼の研究や著作に触れることで、彼の理論や思想を深く理解することができるでしょう。

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