校田

校田：古代日本の土地台帳作成とその変遷

古代日本の土地制度において、校田（こうでん）は極めて重要な役割を果たしていました。これは、班田（百姓に田地を分配する制度）に先立ち、田地の位置、面積、耕作者などを詳細に調査・記録する作業を指します。正確な土地台帳の作成は、公平な土地分配と国家運営の基盤となるものでした。

律令制下の校田

『日本書紀』には、大化の改新において東国国司が校田を行った記述がありますが、確実な実施は律令制以後となります。養老律令田令では、6年に一度の班田に先立つ重要な手続きとして位置づけられ、国司が校田を行い、新たな受給者と田地を決定する必要がありました。この作業は、戸籍の作成（造籍）と班田と合わせて、数年がかりで行われていたと考えられています。

校田の結果は、校田帳（こうでんちょう）としてまとめられ、田地の位置、面積、耕作者などの情報を詳細に記録した上で、太政官に提出されました。この帳簿は、実際の班田状況を示す授口帳と併せて校田授口帳と呼ばれることもあります。さらに、校田図（こうでんず）と呼ばれる図面も作成されていたと推測されますが、現存する資料がないため詳細は不明です。

校田の困難と制度改正

しかし、校田作業は田地の中に入り込んで行う必要があったため、稲作期には実施できず、冬期に集中して行われることになります。墾田永年私財法の制定後は、田地の権利関係が複雑化し、校田作業の負担が増大。そのため、校田と班田の間隔が開き、班田の時期が遅れる事態も発生しました。これは、班田収授法そのものの機能を揺るがす問題となりつつありました。

こうした状況を踏まえ、延暦4年（785年）、従来計田国司や班田使が兼務していた校田業務を分離し、校田使（こうでんし）を設置する制度改革が行われました。参議級を長官、諸国国守を次官とすることで、中央主導による効率的な校田運営を目指したのです。しかし、実際には畿内地域に限定され、その他の地域では計田国司が引き続き監督する状況が続きました。それでも校田の実施は困難を極め、貞観4年（862年）には太政官が校田帳の大規模な監査（勘会）を実施する事態となっています。

平安時代中期以降の衰退

平安時代中期には、班田収授法そのものが崩壊に向かい、校田も次第に行われなくなっていきました。初期の荘園においても、国家の校田にならって独自の校田や校田使が設置されることもありましたが、その後は国司や荘園領主による検田（田地の調査）に取って代わられていきます。

まとめ

校田は、古代日本の土地制度を支える重要な仕組みでした。律令制下においては、公平な土地分配を実現するための基礎作業として位置づけられ、綿密な調査と記録が求められました。しかし、時代の変遷とともに権利関係の複雑化や作業の困難化などが問題となり、最終的には衰退していきました。校田の変遷を理解することは、古代日本の政治・経済・社会構造を解き明かす上で不可欠です。

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