株主平等の原則

株主平等の原則（かぶぬしびょうどうのげんそく）

原則の概要

株主平等の原則とは、株式会社の株主が、その保有する株式の内容および数に応じて、法律上の関係において平等に取り扱われなければならないという、会社法の根幹をなす考え方です。この原則は、しばしば「株式平等の原則」とも呼ばれ、こちらの方がより正確にその趣旨を表していると言えます。

この原則は、通常一人ひとりの株主を区別なく平等に扱うという意味での「頭数の平等」とは異なります。「頭数の平等」は、文字通り株主の「数」に着目した平等観であり、株主平等の原則が株式の「内容」や「数」に着目するのとは対照的です。

法的な根拠

この原則は、会社法第109条第1項において、「株式会社は、株主を、その有する株式の内容及び数に応じて、平等に取り扱わなければならない。」と明確に規定されています。これは、かつての商法典にはなかった明文の規定であり、会社法において株主平等の原則がより強調されることになった現れです。

旧商法時代には、利益配当請求権や議決権といった株主の重要な権利が持株数に応じて定められていたこと、そしてこれらの原則に対する例外が個別に定められていたことから、解釈として株主平等が原則であると理解されていました。

ただし、公開会社ではない株式会社、いわゆる非公開会社においては、会社法第109条第2項により、株主の権利に関する事項について、個々の株主ごとに異なる取扱いを行う旨を定款で定めることが認められています。これは、非公開会社が持つ閉鎖性や人的な結びつきの強さを考慮した特則であり、株主平等の原則に対する重要な例外規定となります。

原則に含まれる内容

株主平等の原則は、主に二つの側面を含んでいます。

1. 株式内容の平等
これは、発行される各株式の内容が、特に断りのない限り同一であるべきだという考え方です。かつては、内容が異なる株式として発行される「種類株式」がこの原則の例外とされることもありました。しかし、会社法においては種類株式の発行がより柔軟に、かつ広く認められるようになったため、現在では種類株式をもって直ちに株主平等の原則の例外とは考えないのが一般的です。同一の種類に属する株式の間では、その内容が等しくなければならないため、会社法下においても株式内容の平等という考え方は維持されていると解釈されています。会社法の制定により、株式内容の平等という考え方が放棄されたという見方もありますが、同じ種類の株式内での平等性は依然として求められるため、完全な放棄とは言えません。

2. 株主取扱いの平等
これは、同一の内容を持つ株式を保有する株主間においては、その株式の内容や数に応じて同一の取扱いを受けなければならないという考え方です。例えば、同じ種類の普通株式を同じ数だけ持っている株主であれば、配当や議決権の行使において差別されることなく、同じように扱われる必要があります。

原則の例外

株主取扱いの平等にも、いくつかの例外が存在します。

少数株主権: 一定割合以上の株式を保有する株主に認められる権利（例：議案提案権、会計帳簿閲覧謄写請求権など）は、持株数が少ない株主には認められない権利であり、これは株主取扱いの平等の原則に対する例外と解釈されます（会社法第297条第1項など）。これらの権利は、会社の多数派株主による専横を防ぎ、少数派株主を保護するために設けられています。
単元未満株: 単元株式数を定めている会社において、単元未満の株式を保有する株主は、議決権など一部の権利行使が制限される場合があります（会社法第189条）。これもまた、保有株式数に応じた取扱いの差であり、例外の一つです。
非公開会社の定款による異なる取扱い: 前述の通り、非公開会社が定款で個別の株主に対する異なる取扱いを定めた場合も、株主取扱いの平等の例外となります（会社法第109条第2項）。

原則の効果

株主平等の原則は、会社法において比較的拘束力の強い、いわゆる強行規定的な性格を持つ原則とされています。したがって、法令によって明確に許容されている場合を除き、この原則に違反する会社の行為（例えば、特定の株主に対して不当に有利または不利な取扱いを行うこと）は、無効と判断されるか、または取り消しの対象となる可能性があります。これにより、会社は株主間の公正な関係を維持することが求められます。

関連項目

株主優待

株主優待は、株主平等の原則との関係で議論されることがありますが、通常は剰余金の配当とは異なる会社からのサービスや物品の提供であり、社会的な儀礼の範囲内であれば直ちに原則違反とはみなされないことが多いです。ただし、あまりに不平等な内容や金額である場合は、原則違反となる可能性も否定できません。

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