根室車石

根室車石について

根室車石は、北海道根室市の根室半島、特に花咲岬付近に広範囲に分布する、特異な形状をした岩石です。その最大の特徴は、中央から放射状に広がる割れ目であり、まるで車輪のスポークのように見えることから「車石」と呼ばれています。この独特な形状は、方沸石を含むアルカリ性の玄武岩質岩石にみられ、自然が生み出した芸術作品と言えるでしょう。

1939年（昭和14年）9月7日には、その学術的価値と景観の特異さから、国の天然記念物に指定されました。これは、日本の地質学的遺産として、また自然が創造した驚異として、後世にまで大切に守り伝えていくべきものであることを示しています。

形成過程

根室車石が形成されたのは、白亜紀（約6000万年～1億3000万年前）という非常に古い時代です。当時、この地域は現在よりも温暖な海であり、アンモナイトやイノセラムスといった生物が生息していました。

海底の奥深くから、1000度以上にもなる高温のマグマが上昇し、海水を含んだ泥（根室層）付近で水平方向に流れを変え、溶岩となって泥の中に侵入しました。この時、泥の中の海水が冷却材となり、溶岩の表面から冷やされて固まり始めます。最初は柱状節理と呼ばれる柱のような割れ目ができるのですが、内部はまだ溶けた状態であり、後から送られてくる溶岩によって先端部から海水が浸入し、内部が急速に冷却されます。このような過程を経てできた溶岩を「枕状溶岩」と呼びます。

この地域で見られる岩石は粗粒玄武岩で、一般的には直径1～2メートル、最大で6メートルにも達するものがあります。このような放射状節理構造は、火成岩の中でも珍しく、学術的にも非常に貴重なものです。太平洋に面した断崖に、この球状の岩石が多数重なり合っている様子は、壮観な景観を作り出しています。

文化的な側面

根室車石は、アニメ『ゴールデンカムイ』の第32話にも登場しています。このアニメでは、土方歳三らが「人斬り用一郎」と呼ばれた土井新蔵を根室まで追い詰め、殺害する場面で、この特徴的な石が背景として描かれています。

近年の状況

2022年12月には、高潮被害により車石への遊歩道が一部通行止めになるという事態が発生しました。これは、自然がもたらす脅威と、それを管理することの難しさを示しています。

まとめ

根室車石は、その独特な形状と形成過程、学術的価値、そして景観の美しさから、多くの人々を魅了する存在です。自然が作り出した驚異として、今後もその価値を理解し、大切に保護していく必要があります。



関連情報

節理: 岩石が割れてできる規則的な割れ目のこと
外部リンク
* 根室車石 - 国指定文化財等データベース（文化庁）

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