根室郡

根室郡の歴史：アイヌ文化から現代都市への変遷

北海道東部に位置した根室郡は、豊かな歴史と複雑な行政区分変遷を辿った地域です。古くからアイヌの人々が居住し、独自の文化を築き上げてきました。彼らの生活の痕跡は、現在も郡域に残るチャシ群（環状列石）に見ることができます。

江戸時代に入ると、根室郡域は松前藩の支配下に置かれ、「ネモロ場所」として知られるようになりました。しかし、18世紀末から19世紀初頭にかけて、南下政策を進めるロシアの脅威が高まり、根室は戦略的に重要な地域となりました。このため、1799年には天領となり、仙台藩による警備が強化されるなど、緊張関係が続きました。この時代には、高田屋嘉兵衛によって金刀比羅神社や市杵島神社が創建されるなど、信仰面でも変化が訪れています。

明治時代に入ると、1869年（明治2年）に国郡里制が施行され、根室国と根室郡が正式に設置されました。その後、開拓使、東京府、再び開拓使の管轄下に入るなど、初期の行政区分は不安定でした。1879年（明治12年）の郡区町村編制法施行により、近代的な行政区画としての根室郡が成立します。

明治時代を通じて、根室郡は幾度となく行政区域の変更を経験しました。根室郡外八郡役所、根室県、北海道庁根室支庁など、様々な機関の管轄下に置かれ、町村の合併や分離も頻繁に発生しました。1880年代から1890年代にかけては、弥生町、光和町など、多くの町が新たに設置されています。1900年（明治33年）には、北海道一級町村制の施行により根室町が発足しました。さらに1906年（明治39年）の北海道二級町村制の施行、1923年（大正12年）の町村合併を経て、昭和時代へと続きます。

第二次世界大戦後、1947年（昭和22年）の地方自治法施行により、根室郡は北海道根室支庁の管轄下となりました。そして1957年（昭和32年）、根室町と和田村が合併し、根室市が誕生しました。これにより、長い歴史を持つ根室郡は消滅することとなりました。

根室郡の歴史は、アイヌ文化、松前藩支配、ロシアとの緊張関係、開拓時代の混乱、そして近代的な地方自治への移行という、様々な要素が複雑に絡み合ったものです。その歴史的変遷を知ることは、現在の根室市、そして北海道東部の発展を理解する上で非常に重要です。根室郡の消滅は、一つの時代の終わりを告げると同時に、新たな発展の幕開けでもあったと言えるでしょう。 その歴史は、地名や神社、そして人々の記憶の中に今も息づいています。

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