根本分裂

根本分裂とは

根本分裂（こんぽんぶんれつ）は、仏教教団において非常に重要な歴史の一幕であり、釈迦が亡くなった後約100年頃、第二回結集を経て発生しました。この出来事によって、これまでひとつにまとまっていた弟子たちの集団が、大衆部と上座部の2つの教団に分かれることとなりました。この分裂は、仏教の発展において重要な転機をもたらしました。

分裂が起こった時代背景は、南伝の『婆沙論』ではアショーカ王の時代とされており、北伝の『マハーワンサ』の記述によればカーラーショーカ王の時代と言われています。分裂の原因については南北両伝で異なった見解が存在し、それぞれの教義を強調するために異なる視点から語られています。

分裂の原因

南伝の見解

南伝の記録によれば、分裂の引き金となったのは、ヴァイシャリーのヴァッジ族の比丘たちが提示した「十事の問題」でした。この十事は、既存の戒律（教団の規則）を緩和する10の特例を示しており、中でも「金銀を扱ってもよい」とする条項が重要視されました。実際に托鉢を行う際、僧侶は金銭を布施として受け取る場面もあり、このような実情を認める現実派が多数派となり「大衆部」と呼ばれる一派を形成しました。

一方で、この除外例を認めない厳格な姿勢を持つ少数派は「上座部」と名付けられ、十事を非法と定める立場をとりました。これに対して、有部の記録では、一時的に問題となったが、結果的に収束したとされていますが、スリランカの大寺派では分裂の原因とされています。

北伝の見解

北伝の記述では、『異部宗輪論』において、大天（マハーデーヴァ）が主張した「五事の問題」が原因とされています。これらの五事は、阿羅漢、すなわち修行者の究極の境地についての5つの低い見解を含んでいます。この見解に賛成したのが大衆部であり、反対したのが上座部という構図が形成されました。これがいわゆる「大天五事」と呼ばれるもので、分裂を一層深める要因となりました。

学説

仏教学者の中村元氏は、根本分裂の原因として南伝の「十事問題説」がより信憑性が高いと考えています。彼の見解によると、北伝の五事という新らしい説は、後に大衆部から分裂した制多山部の祖である「大天」の行動に基づくものである可能性が高いと指摘しています。また、分裂が即座に起こったのではなく、上座部と大衆部の対立が徐々に進行した結果としての分裂であると述べています。

枝末分裂

根本分裂の後、約100年後には、北伝において20の部派が分立する「枝末分裂」が起こります。この分裂についても、大寺派の記録と有部の記録では異なった情報が存在し、大寺派の『マハーワンサ』ではアショーカ王の時代には既に終わっていたとされている一方、有部の『婆沙論』ではアショーカ時代に根本分裂が起こることになったと主張しています。

このように、根本分裂及びその後の状況は、仏教の流派の多様性を生み出し、今日の仏教の形に大きな影響を与えました。それぞれの教派が異なる見解を持つことによって、釈迦の教えが多彩に解釈され、広まることができたのです。

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