根津遊廓

根津遊廓の歴史

根津遊廓は、江戸時代前期の1706年に、根津神社（現在の東京都文京区根津）の社殿新造のために集まった職人たちを相手にした酒場が始まりとされています。この酒場では、女性が接客をするようになり、やがて私娼が集まる岡場所、つまり非公認の遊廓へと発展しました。

1842年（天保13年）には、水野忠邦による天保の改革によって、遊廓は一時的に禁止され、新吉原への移転が命じられました。しかし、実際には根津での営業は続けられていたようです。幕末の慶応年間になると、江戸幕府陸軍奉行の許可を得て正式な遊廓として建設され、徐々に繁盛していきました。

明治時代に入ると、1870年（明治3年）には、根津八重垣町の通りに200株以上の桜が植えられ、総門が設けられるなど、新吉原の遊廓を模した景観が作られました。しかし、根津遊廓はもともと期間限定で許可されたものであり、1888年（明治21年）6月末日をもって閉鎖されることになりました。遊廓は洲崎（現在の東京都江東区東陽）への移転を余儀なくされました。

移転の背景には、東京帝国大学（現在の東京大学）に近接していたことが大きく影響しています。当時、一部の東大生が根津遊廓に入り浸るようになり、その風紀の乱れは政府からも問題視されていました。文部省は、東大生の遊郭通いがエスカレートしたため、東大を千葉県に移転させることも検討したほどです。また、東大生であった文豪の坪内逍遥は、根津で出会った遊女の花紫を後に妻に迎えたという逸話も残っています。

1888年（明治21年）7月1日、根津遊廓は正式に洲崎へ移転し、洲崎遊廓として新たな歴史を歩み始めました。洲崎遊廓は、洲崎弁天町一丁目・二丁目に位置し、1887年（明治20年）5月に埋め立てられた深川区に編入された土地にありました。遊廓の敷地は約5万坪という広大なもので、東北は川を隔てて西平井町に、西は浅い渠を隔てて埋立地に、南は永代浦に面していました。

根津遊廓は、江戸時代から明治時代にかけて、その時代ごとの社会情勢や文化を反映した遊廓でした。その歴史は、当時の人々の生活や風俗を理解する上で重要な資料となっています。

関連項目

谷根千
花街

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