桂木洋子

昭和を彩った女優・桂木洋子：華麗なるキャリアと謎に包まれた最期

桂木洋子（本名：黛住恵、旧姓：富沢）。1930年4月6日生まれ、2007年3月没。昭和中期、1940年代後半から1960年代前半にかけて活躍した、多くのファンを魅了した女優である。東京・四谷（現新宿区）の家具屋の娘として生まれ、1946年、東京都立麹町女子商業学校（現・東京都立芝商業高等学校）卒業後、松竹歌劇団に入団。

歌劇団時代には、同期に千草かほるらがいたという。1948年、黒澤明脚本の木下惠介監督作品『肖像』で映画デビュー。続く『破戒』出演を機に歌劇団を退団し、松竹に入社する。その後、木下惠介監督作品に多数出演し、甘いマスクと演技力で人気を博した。1950年には『三つの結婚』で初主演を果たすなど、数々の映画で活躍した。

彼女のキャリアは順風満帆に見えたが、1953年、作曲家の黛敏郎氏と結婚。以降は家庭を優先し、徐々に映画出演を減らしていく。1963年公開の日活映画『丘は花ざかり』を最後に、女優業から引退した。

引退後は、公の場から姿を消し、静かに生活を送ったと伝えられている。2007年3月に死去、満76歳没。葬儀は近親者のみで行われ、その死は翌月になって公表された。死亡日や死因は、遺族の意向により詳細が明らかにされていない。夫の黛敏郎氏は、彼女より先に1997年4月に亡くなっている。

桂木洋子には、日本放送協会でドラマ演出家、映画監督としても活躍する長男、黛りんたろう氏がいた。彼女は、自身のキャリアだけでなく、家族にも恵まれた人生を送っていたと言えるだろう。

貴重な海外渡航と多彩なフィルモグラフィー

1956年、カンヌ国際映画祭出席のため、フランスを訪問。当時、海外渡航が自由化されていなかったため、これは非常に貴重な体験であった。

彼女の出演作品は映画、テレビドラマと多岐に渡る。主な映画作品には、『破戒』（1948年）、『肖像』（1948年）、『晩春』（1949年）、『破れ太鼓』（1949年）、『宵待草恋日記』（1950年）、『薔薇合戦』（1950年）、『醜聞』（1950年）、『善魔』（1951年）、『海の花火』（1951年）、『泣きぬれた人形』（1951年）、『陽気な渡り鳥』（1952年）、『武蔵と小次郎』（1952年）、『夏子の冒険』（1953年）、『日本の悲劇』（1953年）、『忠臣蔵 花の巻・雪の巻』（1954年）、『やがて青空』（1955年）、『台風騒動記』（1956年）、『喜びも悲しみも幾歳月』（1957年）、『密会』（1959年）、『白い牙』（1960年）、『丘は花ざかり』（1963年）などがある。

テレビドラマでは、『おめでたい連中』（1956年、NTV）、『冠婚葬祭』（1959年、NTV）、『石の庭』（1959年、CX）、『SOSパリ』（1959年、NTV）、『愛こそわがすべて』（1961年、NTV）、『蔦』（1961年、TBS）、『美貌の歴史』（1962年、CX）などに出演している。

謎多き生涯と、その足跡

華やかな経歴と、謎に包まれた最期。桂木洋子の生涯は、多くの謎を残したまま幕を閉じた。しかし、彼女が残した数々の作品と、その存在感は、今もなお多くの人々の記憶に刻まれている。彼女の出演作品は、日本映画データベース、KINENOTE、allcinema、テレビドラマデータベースなどで確認できる。これらの資料を通して、昭和を代表する女優の一人としての彼女の輝かしいキャリアと、静かに幕を閉じた人生を改めて振り返ることができるだろう。

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