桂歌蔵

桂 歌蔵（かつら うたぞう）

桂歌蔵は、1964年7月20日に大阪府堺市で生まれた落語家、そして作家である。本名は安田 彰吾（やすだ しょうご）。落語芸術協会に所属し、日本ペンクラブの会員でもある。大東文化大学経済学部を卒業しており、高座に上がる際には「ハッピートーク」を出囃子として用いる。

落語の世界への第一歩は、1991年12月に桂歌丸の門を叩いたことから始まる。この時は「桂歌郎」という名で活動を開始した。その後、1996年2月には二つ目に昇進するにあたり、「桂歌蔵」と改名。そして、2005年5月には真打へと昇り詰めた。

歌蔵氏の人物像を語る上で欠かせないのは、その多彩かつ異色の経歴である。落語家になる以前、彼はイギリスへ渡り、パンク・ロックバンド「ストラングラーズ」のメンバーであるジャン＝ジャック・バーネルが主宰する空手道場に入門するという経験を持っている。さらに、前座時代の1994年には、30歳という年齢を目前にしながらプロボクシングのC級ライセンスを取得している。ボクシングと落語、二足のわらじを履くことについては、師匠である桂歌丸と深く話し合った結果、最終的には落語の道に邁進することを決意したという。

落語家としての得意ネタは、滑稽噺や与太郎噺、そして人情噺と幅広い。噺家としての活動に加え、文筆家としての顔も持ち合わせており、二つ目時代から多くの新聞や雑誌でエッセイやコラムの連載を執筆している。特に、週刊ヤングサンデーに連載されたコラム「笑いの虎」では、様々な分野で活躍する芸人たちに桂歌蔵自身が切り込むというスタイルで、3年半にわたり計32回に及ぶ長期連載となった。

真打昇進後は、国内外での活動を積極的に展開している。特に海外公演には力を入れており、英語落語なども披露している。これまでに訪れた国は16か国に及び、その国際的な活動は注目されている。

作家としての評価も高く、本名である安田彰吾名義での作品も多い。2009年には「アイ・フォート・ザ・パスト」が文藝春秋の第89回オール讀物新人賞の最終候補となった。2017年には北國新聞社主催の第5回赤羽萬次郎賞で優秀賞を受賞し、同年には第3回藤本義一文学賞でも「虫の知らせ」が特別賞に輝いている。これらの文学賞での評価を経て、2019年には角川書店から青春落語小説「よたんぼう」を、光文社からは小説「廓に噺せば」をそれぞれ出版した。さらに、2019年7月には日本文藝家協会が編纂する「ベスト・エッセイ2019」に自身のエッセイが選出されるなど、作家としての地位も確固たるものとしている。

これまでに「前座修業」「落語家に学ぶ「笑い」のつくりかた」といった著書や、「世界をネタにかける落語家」と題した海外体験記シリーズなど、複数の書籍を刊行している。また、雑誌連載やテレビ・ラジオ番組への出演も多く、多方面で活躍を続けている。

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