桃原農園

株式会社桃原農園は、沖縄県那覇市に本社を構え、造園事業を軸に、土木工事、観葉植物のリース、フラワーショップ運営など、多岐にわたる事業を展開している企業です。

その歴史は、最後の琉球国王・尚泰王の四男である尚順男爵（松山王子）が、自らの邸宅の庭を基に農園を開いたことに始まります。尚順男爵は、沖縄県外から積極的に果樹や観賞用植物を導入し、沖縄の農業の発展に大きく貢献しました。特に、大正時代には首里に首里本園、本部町に伊豆味農場、名護市に源河農場など、県内各地に農園を展開し、沖縄の造園業の先駆けとなりました。

しかし、沖縄戦によって農園は壊滅的な被害を受け、創業者である尚順男爵も命を落としました。戦後、尚順男爵の六男である尚詮氏が復興作業に着手し、1951年（昭和26年）には合資会社として法人化しました。その後、1998年（平成10年）には株式会社へと組織変更を行い、現在に至ります。

桃原農園は、造園業で培った技術を活かし、土木工事業にも進出しました。1973年（昭和48年）には建設業法に基づき造園工事業の許可を取得し、その後、土木工事業、とび・土工工事業、石工事業、ほ装工事業、水道施設工事業などの許可も取得しました。これにより、公共事業にも積極的に参画し、沖縄県のインフラ整備にも貢献しています。

また、フラワーショップ事業では、1975年（昭和50年）に那覇市安里に安里フラワービルを新築し、フラワーショップを開設しました。このフラワーショップは、国際通り沿いに位置し、多くの観光客や地元の人々に親しまれてきました。2011年には、那覇市牧志の再開発地区である「さいおんスクエア」内にトーバルカーゴス店をオープンし、2017年にはザッカトーバルを開設するなど、新たな店舗展開も進めています。

さらに、桃原農園は、指定管理者制度を活用し、公共施設の運営管理にも携わっています。2006年（平成18年）から2009年（平成21年）にかけては奥武山公園、2008年（平成20年）から2013年（平成25年）にかけては恩納村体育施設といった県内主要な公共施設の運営管理を担い、地域社会の活性化にも貢献しています。近年では、2019年に恩納支店、2020年に与根ハウス、2021年には中部営業所を開設するなど、県内各地への事業展開を積極的に進めています。

株式会社桃原農園は、琉球王朝時代からの歴史と伝統を継承しつつ、現代のニーズに合わせた事業展開を行っています。その活動は、沖縄の農業、造園業、建設業の発展に大きく貢献しており、今後も沖縄県民の生活を豊かにする企業として、その活躍が期待されています。

参考文献として「松山御殿物語」刊行会編『松山御殿物語-明治・大正・昭和の松山御殿の記録』があげられ、株式会社桃原農園の創業者一族である尚順男爵の事績を知る上で貴重な資料です。

関連人物としては、創業者である尚順が挙げられます。

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