安里

沖縄県那覇市安里：歴史と文化が交錯する場所

安里（あさと）は、沖縄県那覇市に位置する地名で、かつては安里村として知られていました。現在の住所表記では、安里1丁目から3丁目、おもろまち1丁目、大道、松川1丁目、三原1丁目から3丁目に相当します。この記事では、安里村、真和志村、真和志市時代の歴史的な背景を含めて、安里の魅力を深く掘り下げていきます。

地理

安里は那覇市真和志支所の管轄内にあり、北にはおもろまち（那覇新都心）、東には大道、南には三原と壺屋、南西には牧志、西には泊と隣接しています。かつては泊港に近いため「脇泊」とも呼ばれていました。泊の発展とともに安里は縮小していったとされています。安里一帯はかつて安里川の河口部に位置し、現在のゆいレール牧志駅近くまで内海が広がっていました。

戦前は農村でありながら女学校や陸軍施設が存在していましたが、現在はゆいレールの安里駅を中心に住宅地が広がっています。また、栄町市場や栄町社交街は、今もなお活気に満ち溢れています。地形的な特徴としては、沖縄戦で激戦地となったシュガーローフ（安里五二高地）が挙げられます。

安里川と安里橋

安里地域の中央部を流れる安里川は二級河川であり、かつては女学生が足を洗う姿も見られました。この川は泊を経て東シナ海へと注ぎます。かつては那覇と首里の間に内海があり、船橋が利用されていましたが、1451年に長虹堤が築かれ、その一部として安里橋が架けられました。この橋はかつて「球国の大観也」と刻まれた石橋で、首里と那覇を結ぶ重要な場所でした。また、この付近は宗元寺に近いため、宗元寺西原とも呼ばれていました。旧石器時代には、この安里橋付近まで海が迫っていたと考えられています。

歴史

琉球時代

安里村は、泊村に隣接していたため「脇泊」とも呼ばれ、基本的には農村でした。首里と那覇の間に位置し、真和志村、真和志市の中心的な地域でした。1922年には沖縄県営鉄道嘉手納線安里駅が設置され、地域はさらに活気づきました。尚円王時代には、大安里大親清信が安里地頭となり、その後、祖姓、孫姓、毛姓へと受け継がれていきました。

戦前

1880年時点で安里村の人口は219戸、815人でした。1890年には陸軍の練兵所が設けられ、1908年には沖縄県立高等女学校が首里から移転、1909年には陸軍墓地が設置されました。これにより人口が増加し、1920年には東部の一部が「大道」として分割されました。1908年には真和志間切が真和志村となり、安里村はその字となりました。1923年には沖縄県営鉄道の安里駅が設置されています。

1933年には、那覇中心部と首里を結ぶ新しい道が湿地帯に開通し、「新県道」（現在の国際通りの原型）と呼ばれました。これにより、従来迂回していたルートが直線化され、交通の便が大幅に向上しました。1944年時点での安里村の人口は1248人、大道は692人でした。

沖縄戦（シュガーローフの戦い）

1945年の沖縄戦において、安里東側にある安里五二高地（米軍が言うところのシュガーローフ）を巡り、日本軍と米軍の間で激しい戦闘が繰り広げられました。この丘は現在のおもろまち駅の西側に位置しています。碑文が設置されていますが、開発により地形は大きく変化しています。

戦後

戦後、真和志村の住民は糸満で米軍の保護下に置かれていましたが、1946年4月3日に帰村が決定し、5月から7月にかけて帰還しました。1953年10月1日には真和志村が真和志市に昇格し、安里は真和志市の安里1区、安里2区となりました。1957年に真和志市は那覇市と合併し、安里も那覇市の一部となりました。

1975年には沖縄本島中部へ向かうバイパスが開通し、安里交差点は交通の要所となりました。2003年にはゆいレール安里駅が開業し、高架橋も新しく架け替えられました。

栄町

現在の那覇市安里東部から大道にかけての一帯は、栄町と呼ばれ、歓楽街である「栄町社交街」や、アーケードを備えた「栄町市場」があります。ここは那覇市内でも有数の飲食街で、2008年には150もの店舗があったとされています。

戦前は沖縄県女子師範学校や沖縄県立第一高等女学校、陸軍墓地などが存在していましたが、戦後の闇市を経て1949年に区画整理が行われ、栄町市場が開かれました。21世紀初頭現在も、昔ながらの市場の雰囲気を残しており、路地が入り組んで複雑な構造をしています。また、老舗も多く、昭和の雰囲気を色濃く残しています。

近年は、商店経営者の高齢化により過疎化が懸念されましたが、新たなイベントや飲食店の開業、地域のお年寄りが参加する「おばぁラッパーズ」の活動など、積極的な町興しが行われています。また、「栄町音頭」という楽曲も制作され、町の歴史を伝えています。

また、栄町には「ひめゆり同窓会」の看板も見られ、ひめゆり部隊に第一高等女学校の生徒が多く参加していたことを示しています。社交街には「旅館」と称する性風俗店が密集しており、夜間には売春婦が呼び込みを行っています。

交通

安里は交通の要所であり、沖縄県道39号線（国際通り）と沖縄県道29号那覇北中城線（崇元寺通り・大道通り）が交わる安里三叉路、国道330号（ひめゆり通り）と県道29号線、県道46号線が交わる安里交差点があります。安里交差点は立体交差になっており、安里インターチェンジとも呼ばれています。また、沖縄都市モノレール線の安里駅があり、路線バスも複数利用可能です。

施設

安里八幡宮

安里八幡宮は琉球八社のひとつで、創建の詳細は不明ですが、1466年頃に尚徳王が喜界島征伐の祈願を行ったと伝えられています。祭神は八幡神です。

陸軍墓地

1909年に正式に陸軍墓地として設立されました。

沖縄県立第一高等女学校

栄町近辺にかつて存在した女学校で、1908年にこの地に移転しました。沖縄戦で焼失しましたが、ひめゆり学徒隊の奮闘と悲劇は今も語り継がれています。

沖縄県立女子師範学校

同じく栄町近辺に存在した女子師範学校で、1915年に沖縄県立第一高等女学校の隣に移転しました。沖縄戦で焼失しました。

浮縄嶽

安里川河口部にあった御嶽で、海上交通安全などを祈願する場所でした。もともとは「浮縄美御嶽」と呼ばれていました。

安里小学校

1910年に真和志第二小学校として開校し、その後安里小学校となりました。1940年に白山森の後方へ移転し、現在の安謝小学校の場所にありました。安里小学校の歴史は、安謝小学校に受け継がれています。

その他の施設

ホテルロイヤルオリオンや桃原農園フラワーショップなどがあります。

その他

安里屋ユンタは八重山諸島の民謡であり、安里とは直接的な関係はありませんが、安里駅の到着メロディに使用されています。

まとめ

安里は、歴史的な背景、沖縄戦の記憶、そして戦後の復興と発展が交錯する場所です。栄町市場や安里川、安里橋など、見どころも多く、沖縄の歴史と文化を肌で感じることができる地域です。交通の便も良く、沖縄を訪れる際にはぜひ訪れていただきたい場所です。

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