桃太郎海の神兵とは？意味をやさしく解説

桃太郎海の神兵

『桃太郎海の神兵』は、1945年に公開された日本初の長編アニメ映画として知られています。戦時中、国策映画として海軍省の命を受け、松竹動画研究所が製作しました。74分の白黒アニメーションで、当時の日本が抱える時代背景や製作陣の情熱が色濃く反映されています。

概要

本作は、『桃太郎の海鷲』の姉妹編として、南方戦線を舞台に、日本海軍落下傘部隊の活躍を描いています。「八紘一宇」と「アジア解放」という当時の日本の大義を主題とし、国家の威信をかけた大作として制作されました。当時の金額で27万円という巨額の費用と、100名近い人員が投入されたことからも、その力の入れようが伺えます。

落下傘部隊の描写には、1週間の体験入隊を通じて実際の動きを分析し、マルチプレーン撮影台や透過光といった特殊効果を駆使しました。特に透過光の使用は、世界初とも言われています。

ミュージカル仕立ての演出は、監督の瀬尾光世がディズニーの『ファンタジア』から着想を得たものです。戦意高揚という目的だけでなく、子供たちに夢と希望を与える作品を目指した瀬尾の想いが込められています。また、日本が主導する〈大東亜共栄圏〉のもとでの平和への願いも暗示されています。

制作の舞台裏

制作スタジオは銀座の歌舞伎座隣に設けられ、一人のアニメーターが一つのキャラクターを専従するという、現代では考えられないような贅沢な作画体制がとられました。しかし、戦況の悪化とともに若いスタッフが次々と徴兵され、スタジオは空襲警報の度に機材や動画を持って避難するなど、困難な状況が続きました。物資不足も深刻で、質の悪い動画用紙を再利用するなど、劣悪な環境下での制作を余儀なくされました。当初70名近くいたアニメーターは、完成時には15名ほどに減っていたといいます。

完成後も、海軍省からのクレームによる修正作業に手間取り、公開が危ぶまれましたが、最終的には1945年春に公開されました。

手塚治虫への影響

手塚治虫は、本作を鑑賞した際に大きな感銘を受け、日記に感想とイラストを書き残しています。その後の手塚作品にも、本作から得た影響が見られます。

戦後の経緯

敗戦後、フィルムはGHQによって没収・焼却されたと思われていましたが、1982年に松竹の倉庫でネガが発見されました。その後、国立近代美術館フィルムセンターで上映され、1984年には一般公開もされました。

1987年にはテレビ放映もされ、監督の瀬尾光世と手塚治虫の対談が実現しました。

近年では、デジタル修復版が制作され、カンヌ国際映画祭に出品されるなど、再評価の動きが進んでいます。

あらすじ

富士山の麓の村に、海軍に出征していた猿、犬、雉、熊が休暇で帰ってきます。猿は近所の子供たちに海軍の仕事について嘘をつきますが、実際は彼らは海軍陸戦隊落下傘部隊の一員でした。休暇後、彼らは飛行場で訓練に明け暮れ、やがて「鬼ヶ島」への空挺作戦が発動されるというストーリーです。

桃太郎 海の神兵