桃生城

桃生城（ものうじょう）

桃生城は、陸奥国桃生郡（現在の宮城県石巻市）に所在する古代の城柵です。この城は、天平宝字元年（757年）にその建設が始まり、天平宝字3年（759年）には完成を見ました。桃生城の建立により、按察使の藤原朝狩は従四位下に昇進し、この功績によって他の武将や関係者にも叙位叙勲が行われたことが記録されています。

しかし、桃生城の歴史はその後に波乱に満ちたものとなります。宝亀5年（774年）7月には、蝦夷によって城の西郭が攻撃され、これが「桃生城襲撃事件」として知られるようになりました。この襲撃に対して、翌年の宝亀6年（775年）には、大伴駿河麻呂を含む約1,790人が叛賊を討伐し、再び城は奪還されますが、その後の記録は残されていません。

設立と歴史的意義

桃生城は、陸奥国の防衛拠点として重要な役割を果たしました。そのため、史料には頻繁に名前が登場し、古代日本の政治や軍事の枠組みを理解する上で欠かせない遺跡です。桃生郡における土地利用や社会構造を映し出す象徴的な存在であり、戦国時代に入るとその重要性は少しずつ変化していったものと考えられています。石巻市の太田地区には「上郡山」という地名も残っており、桃生郡家がこの地域で存続していたことを示唆しています。

調査・研究の進展

桃生城の所在地を巡る研究は長い歴史を持ちます。1895年、熊谷眞弓が中津山村の茶臼山に桃生城があったと提案しました。この考えは長らく支持されてきましたが、考古学的な証拠は得られませんでした。1923年には喜田貞吉が布目瓦が出土する長者森を桃生城の候補地として提唱し、その後のさらなる研究へとつながりました。

1963年、調査を行った高橋富雄は、桃生城が丘陵台地に存在することを示唆し、多数の遺物が発見された場所を「桃生城擬定地」として特定しました。さらに、1969年には小野寺正人が長者森を桃生城跡として支持しました。このように、桃生城に関する研究は進展を続けています。

発掘調査

その後も続けられた発掘調査により、桃生城は東西二郭構造を持つことが確認されています。2001年には、三陸自動車道の建設に伴い、城の外郭線と思われる柵列跡が発見され、桃生城の全貌が明らかにされつつあります。遺跡からは奈良時代の瓦や土器が出土しており、当時の生活や文化を知る上で貴重な資料となっています。

また、東側の新田東遺跡からは、当時の建物跡が発見され、埋葬文化や宗教的な要素を示唆する遺物も出土しています。こうした調査の進展は、桃生城の歴史的な側面をより深く知る手助けとなっています。

アクセス

桃生城へのアクセスは、三陸沿岸道路の桃生豊里ICから車で約10分で到達できます。この利便性からも、桃生城は今なお多くの人々に訪れられ、歴史的な価値を再認識されています。

将来的にはさらに多くの研究が進むことで、桃生城の全貌やその歴史的意義が解明されることが期待されています。

もう一度検索