桐野丈二郎

桐野 丈二郎（きりの じょうじろう）

日本の作曲家、音楽プロデューサー、そしてボーカリストおよびボイストレーナーとして多岐にわたる活動を展開する人物。1951年4月5日、大阪府大阪市に生まれる。音楽活動におけるペンネームにはジョニー桐野、また「平和勝次とダークホース」などでの芸名として中川ヒロシを用いることもある。

桐野氏のキャリアは、1960年代初頭に子役として始まった。関西テレビの子供向け音楽番組「ドレミファ先生」にホストとして出演したのを皮切りに、松竹家庭劇やミヤコ蝶々劇団の全国公演に参加。三和銀行のポスターモデルや、NHKドラマ「星光る」「チコちゃん日記」へのレギュラー出演など、テレビや舞台を中心に活動の幅を広げた。また、東映や大映といった映画会社の作品にも出演しており、大映映画「続、酔いどれ博士」での勝新太郎との共演時には、共演者であった荒木一郎からギターの手ほどきを受け、音楽への道を意識し始めたという。子役時代の経験は、後の音楽活動における表現力やステージングにも影響を与えたと考えられる。

音楽を志した桐野氏は、演技の道ではなく、音楽で名門として知られていた桃山学院高等学校の軽音楽部へ進学。当時の軽音楽部には、後にアリスのメンバーとして知られる堀内孝雄が部長を務めており、桐野氏はその2年下の後輩として音楽活動に没頭した。高校時代にはロックバンド「バイオレッツ」（当初は「バイオレンス」と名付けられる予定だったが、オーディションでの書き間違いから現在の名称となったというエピソードがある）を結成し、大阪のジャズ喫茶などで精力的にライブ活動を行う。その実力が認められ、テイチクレコードからのスカウトを受け、グループ・サウンズブームの終焉とともにソロ歌手として「夢に恋を」でデビューを果たした。

1970年代に入ると、松竹芸能に所属し、音楽ショーやコミックバンドの世界へ。西川ヒノデショウ、スカタンボーイズといったユニットでの活動を経て、吉本興業所属のコミックバンド「平和勝次とダークホース」にオリジナルメンバーとして参加する。このグループ活動の中で、自主制作盤として発表された「宗右衛門町ブルース」のアレンジと演奏を担当。同曲がクラウンレコードからメジャーリリースされると、予想外の大ヒットとなり、グループは一躍脚光を浴びることになる。当初5名だったメンバーは、ヒット以降は平和勝次、板東春彦、そして桐野氏（中川ヒロシ）の3名体制となった。「宗右衛門町ブルース」のヒットにより、「平和勝次とダークホース」は一般的に歌謡コーラスグループとして認識されるようになったが、そのルーツはコミックバンドにあったという興味深い背景を持つ。グループは1973年に一旦解散するも、1993年のモダンチョキチョキズとの共演時や、2005年の「宗右衛門町ブルース」のカラオケ再浮上を受けたNHKの要請により、複数回にわたり再結成を果たし、多くのテレビ番組に出演している。

「平和勝次とダークホース」解散後も、桐野氏は音楽への探求を続けた。グループ・サウンズ時代の仲間と「Shouts」を結成するも短期間で解散。その後はライブハウスのメインボーカルとして、ロックやディスコサウンドなど多様なジャンルで活躍した。特に、アフリカ系アメリカ人の指導を受けR&Bボーカルに転向した経験は、彼の音楽性に深みを与えた。関西の実力派ミュージシャンを集めて結成したロックンロールバンド「NAMBA ROAD」では楽曲が東芝からのリリースが決定するも解散となるなど、数々の経験を積む。また、ライブイベントのプロデュースや、Rock´n´Roll Musical劇団「グラフィティーズ」の演出・音楽も手掛けるなど、活動は多岐にわたった。この頃から外国人メンバーを加えたR&Bバンド「BLUES STREET Band」を結成し、ジョニーという愛称で呼ばれるようになり、後の作曲ペンネーム「ジョニー桐野」の由来となった。

2000年代に入り、宗右衛門町ブルースの作曲者である恩師、山路進一氏の死去を機に、作曲家としての活動を本格化。2002年には自身の歌唱法「桐野VOCAL」を体系化し、大阪にスタジオを開設して後進の指導を開始した。歌姫オーディションでの審査員経験からチチ-chichiをスカウトし、最初の門下生として育成するなど、プロデューサー、指導者としての才能も発揮。高杉みなみ、広川あいなといった門下生を指導し、彼女たちのユニット「リトルキューティー★J´s」を作曲プロデュースするなど、多くの若手育成に力を注いでいる。この際に門下生に付けた名前には、自身が尊敬する人物（高杉晋作、広川太一郎）の名を冠するなど、愛情深い一面も覗かせる。また、音楽制作事務所「エンジェルサウンド」を設立し、オールディーズバンド「ポーキーズ」への参加や楽曲提供、ラジオ番組のパーソナリティ、インターネットTVのプロデュースなど、メディア活動も精力的に展開している。関西地区のバンドマンたちとの連携を深めるため「KANSAI BAND UNION」を結成するなど、音楽シーン全体の活性化にも貢献している。

クレージー・キャッツの熱烈なファンであり、日本の音楽エンターテイメントにおける「コミックバンド」の復権を熱望している桐野氏。そのキャリアは、子役から始まり、グループ・サウンズ、コミックバンド、歌謡コーラス、ロック、R&Bと多様なジャンルを横断し、ボーカリスト、プレイヤー、作曲家、プロデューサー、指導者と様々な役割を担ってきた。特に「宗右衛門町ブルース」を巡るエピソード（ウルフルズ結成への影響など）は、彼の音楽が後世に与えた影響の大きさを物語る。提供楽曲も歌謡曲からポップスまで幅広く、その才能は尽きることがない。長年にわたり日本のエンターテイメント界を牽引し、現在もなお第一線で活躍を続ける貴重な存在である。

提供楽曲（抜粋）

『五人の彼女』/ 宗右衛門町ブルースc/w （歌：平和勝次とダークホース）
『涙のロンリーナイト』（歌：N.Rode）
『清滝夫婦傘』『大阪小唄』（歌：若樹鈴）
『潮風ヴァイアコンディオス』（歌：チ★チ）
『おもかげ戎橋』（歌：丘みどり）
『男泉州だんじり浪漫』（歌：六虎）
『山科の雲』（歌：華）
『潮風』『Pandora』（歌：チチ-chichi）
『男と女唄酒場』（歌：Ree）
『純情Payapa』（歌：PORKEES）
『My Soul Sing』（歌：リトルキューティー★J's）
『太陽の風』（歌：Ｒｅｅ）
* 『Moon Memories』（歌：平尾タミ）

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