桑沢洋子

桑沢洋子は、1910年11月7日に東京で生まれ、1977年4月12日に生涯を閉じました。彼女は20世紀の昭和時代に、日本のファッションデザイン界を牽引した人物です。

桑沢は女子美術学校（現在の女子美術大学）を卒業後、新建築工芸学院でバウハウスの思想に触れました。その後、写真家の田村茂と結婚しましたが、後に離婚しています。雑誌社での編集の仕事を経て、婦人画報社（現在のハースト婦人画報社）に入社し、ジャーナリズムの世界にも足を踏み入れました。

この経験から、桑沢は女性の社会進出と職業婦人の活躍を見据え、衣服による生活改善を提唱し、職場に着ていける服装のデザインを提案しました。1941年には服飾デザイナー伊東茂平のもとで洋裁技術を習得し、翌年には桑沢服飾工房を設立して、本格的にデザイナーとしての活動を始めました。

戦後、桑沢は婦人画報誌などで服飾デザインに関する執筆活動を開始し、1948年には服飾デザイナーの職能団体である「日本デザイナークラブ」の結成に参加しました。また、多摩川洋裁学院長や女子美術短期大学（現在の女子美術大学短期大学部）講師も兼任し、教育者としても活動しました。

桑沢は、デザインを産業的、機能的に捉えることを提唱し、1954年に桑沢デザイン研究所を設立しました。この研究所は、服飾デザインに関する相談や対応、デザイン全般の基礎教育、職能教育を目的としており、後の日本のデザイン教育に大きな影響を与えました。桑沢自身もファッションデザイナーとして、企業ユニフォームや学校制服など、多くのデザインを手がけました。

さらに、より高度な美術・デザイン教育機関として、1966年に東京造形大学を設立し、初代学長に就任しました。東京造形大学には、勝見勝、佐藤忠良、勝井三雄、竹谷富士雄など、著名な教育者が集まりました。桑沢は、東京造形大学の学長、理事長を歴任し、バウハウスの理念を実践することで、日本のデザイン史に大きな足跡を残しました。1973年には、長年の功績が認められ、藍綬褒章を受章しています。

桑沢洋子の主な著作には、以下のようなものがあります。

『服装-色彩を中心として』（朝日新聞社、1954年）
『現代のアクセサリー』（河出書房、1956年）
『ふだん着のデザイナー』（ほるぷ総連合、1980年）
『基礎教育のための衣服のデザインと技術』（家政教育者、1966年）
『桑沢洋子の服飾デザイン』（婦人画報社、1977年）
『ふだん着のデザイナー』（桑沢学園、2004年）

桑沢洋子の功績は、単にファッションデザイナーとしてだけではなく、デザイン教育者、思想家としても、高く評価されています。彼女が創設した桑沢デザイン研究所と東京造形大学は、現在も多くのデザイナーやクリエイターを輩出し、日本のデザイン界を支えています。桑沢洋子の生涯は、日本のデザインの歴史において、重要な一章として語り継がれています。

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