桜井昌一

桜井昌一（さくらい しょういち）は、1933年3月11日に大阪府で生まれた漫画家、出版社経営者です。本名は辰巳義興（たつみ よしおき）といい、漫画家の辰巳ヨシヒロは実弟にあたります。桜井昌一は、宮新司という別ペンネームも使用していました。

幼少期から漫画に興味を持ち、国民学校2年生の頃には漫画を描き始めていました。太平洋戦争の激化により、大阪市内から箕面、そして豊中市へと疎開を経験。戦後、『漫画少年』に四コマ漫画を投稿し入選を果たしますが、結核を患い、1950年から1953年まで国立刀根山病院で闘病生活を送ります。その後、ストレプトマイシンの認可により結核は完治しました。

1955年、写真工芸社勤務を経て、日の丸文庫から長編漫画『やまびこ学校』で漫画家デビュー。ペンネームは、当時すでに活躍していた弟の辰巳ヨシヒロと区別するため、日の丸文庫の社長である山田秀三が強引に名付けました。少年時代は「オキちゃん」という愛称で親しまれていました。読書家でもあった桜井は、デビュー間もない松本清張やミッキー・スピレインの作品を、弟をはじめとする漫画家仲間に紹介し、劇画の形成に大きな影響を与えました。

1959年には、辰巳ヨシヒロやさいとう・たかをらとともに「劇画工房」を結成。しかし、劇画工房解散後、漫画家としての活動に行き詰まりを感じ、1962年に漫画家を廃業。その後、編集者に転身し、劇画家仲間の佐藤まさあきと共同で出版社「佐藤プロダクション」を設立。佐藤や水木しげる、平田弘史らの単行本を手がけました。その後、佐藤から無利子の資金を借り、自身の出版社「東考社」を東京都文京区白山に設立。当初は弟である辰巳ヨシヒロの自宅を事務所とし、その後、東京都国分寺市を経て、埼玉県毛呂山町に移転しました。自宅に印刷設備を揃え、水木しげるの貸本版『悪魔くん』など200点以上の貸本漫画を刊行しました。

貸本業界の衰退後は、「桜井文庫」を創刊し、文庫本形式でのインディーズ出版を開始。水木しげるや辰巳ヨシヒロなどの作品を多数出版しました。また、漫画評論も行い、石子順造らが刊行していた評論誌『漫画主義』などに評論を発表しました。

1980年代末に病に倒れ、長い闘病生活の末、2003年4月4日に亡くなりました。

桜井昌一は、水木しげる作品に登場する「サラリーマン山田」のモデルとして知られています。また、水木の自伝漫画には、貸本出版社の編集者として度々登場しています。2010年の連続テレビ小説『ゲゲゲの女房』に登場する戌井慎二（演：梶原善）のモデルも桜井でした。ドラマでは年配のキャラクターとして描かれましたが、実際の桜井は水木よりも10歳以上年下でした。

主な作品

貸本漫画
やまびこ先生（日の丸文庫）
気狂画家（日の丸文庫）
そば屋三四郎（日の丸文庫）
追跡21番街（日の丸文庫）
仮面の街（日の丸文庫）
著書
ぼくは劇画の仕掛け人だった（エイプリル・ミュージック、1978年）
その他
完全復刻版 影・街（石川フミヤス、草川秀男、久呂田まさみ、さいとう・たかを、桜井昌一、佐藤まさあき、高橋真琴、辰巳ヨシヒロ、松本正彦）


関連事項

劇画
日の丸文庫
* 劇画工房

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