桜塚古墳群 (豊中市)

桜塚古墳群：北摂地方最大級の前方後円墳群の謎に迫る

大阪府豊中市岡町・中桜塚・南桜塚に広がる桜塚古墳群は、4世紀後半から6世紀初頭にかけて築造された44基の古墳からなる大規模な遺跡です。そのうち、大石塚古墳、小石塚古墳、大塚古墳、御獅子塚古墳、南天平塚古墳の5基が国の史跡に指定されており、北摂地方における古墳時代の歴史を解き明かす重要な手がかりとなっています。

古墳群の形成と歴史的背景

桜塚古墳群は、大きく西群、中央群、東群、南群の4つのグループに分けられます。それぞれのグループに属する古墳は、規模や構造、築造時期に違いが見られますが、全体として4世紀後半から6世紀初頭にかけて、段階的に形成されたと考えられています。

19世紀後半には大規模な調査が行われ、絵図が作成されました。その後、昭和10年代の土地区画整理事業や近年の調査により、さらに多くの古墳が発見されましたが、宅地開発などにより、現在では5基のみが残されています。これらの古墳から出土した遺物の中には、金銅製鳳凰文透彫帯金具や細線式獣帯鏡など、貴重な考古資料も含まれています。特に東群の古墳では、棺の身と蓋を留めるのに鎹（かすがい）が使われていたという特異な点も見られます。

各古墳の特徴

大石塚古墳: 桜塚古墳群で最大規模の前方後円墳。全長80メートル以上、後円部径約48メートル。3段築成で、墳丘には河原石の葺石、テラス面には玉砂利が敷き詰められています。円筒形埴輪と朝顔形埴輪も発見されています。

小石塚古墳: 大石塚古墳の北側に位置する前方後円墳。全長49メートル。大石塚古墳とほぼ同じ方向に主軸が揃えられています。葺石は用いていませんが、壷形、朝顔形、円筒形などの埴輪が発見されています。粘土槨から割竹形木棺が発見されました。

大塚古墳: 東群を代表する円墳。直径約80メートル、高さ約18メートル。3段築成で、南北方向に並列した3つの主体部がありました。東槨と西槨からは、鏡、鉄製甲冑、鉄製剣、盾などの副葬品が出土し、国の重要文化財に指定されています。

御獅子塚古墳: 東群を代表する前方後円墳。全長70メートル。2段築成で、2段目斜面のみ葺石を施しています。円筒形埴輪が密に配置され、家、蓋、靱、盾、動物などの形象埴輪片も出土しています。2つの主体部から、三角板鋲留短甲、小札鋲留衝角付冑などの貴重な遺物が出土しました。

南天平塚古墳: 円墳。直径約20メートル、高さ5.5メートル。2段築成で、円筒埴輪列を伴います。発掘調査により、割竹形木棺2基、彷製六獣鏡、鉄刀、鉄剣、短甲、衝角付冑などの副葬品、そして革盾、馬具、弓などの遺物が発見されました。

桜塚古墳群の意義

桜塚古墳群は、北摂地方における古墳時代の社会構造や文化交流を理解する上で貴重な情報源となっています。各古墳の出土遺物から、当時の葬祭儀礼や社会階層、大陸との交流など、多様な側面が明らかになっています。また、古墳群の形成過程や、破壊された古墳の存在も、当時の歴史的背景を理解する上で重要な要素となっています。

現在の状況と今後の課題

多くの古墳が破壊されたものの、現存する5基の古墳は、史跡公園として整備され、一般公開されています。しかし、周辺地域の開発が進む中で、古墳群の保全と活用は依然として重要な課題となっています。今後、さらなる調査や研究を通して、桜塚古墳群の全貌解明と、その歴史的価値の啓発が期待されます。

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