桜姫華伝

桜姫華伝

『桜姫華伝』（さくらひめかでん）は、著名な漫画家・種村有菜が手掛けた日本の少女漫画作品です。集英社の月刊漫画雑誌『りぼん』にて、2009年1月号から2013年1月号にかけて連載され、多くの読者を魅了しました。単行本は「りぼんマスコットコミックス」レーベルから全12巻が刊行されています。連載が始まった際には、読者から「桜姫華伝サポーター」が募られるなど、注目を集めた作品です。単行本の刊行時には、作者の他作品やエッセイコミックとの連携企画、デビュー15周年記念フェアなども行われました。

作品の概要

物語の舞台は遥か平安時代。この時代を背景にした壮大なファンタジーが描かれます。人間を喰らう恐ろしい存在「妖古」や、月の世界にまつわる秘められた歴史、そして登場人物たちが背負う過酷な運命が絡み合いながら展開します。

物語の中核をなす設定として、生まれた時に一人ひとりに与えられる運命の文字「命字」、妖古を滅ぼす力を持つ月の秘剣「血桜」、月の住人の不老不死を支える泉「月泉水」、そして特定の血筋や行為によって体に現れる「血の呪い」といった独特な要素が登場し、ストーリーに深みを与えています。

ストーリー

物語は、両親と兄を若くして亡くした孤独な少女、桜の静かな生活から始まります。彼女は生まれながらの許婚である王良親王の庇護のもと、付き人の淡海や友人たちと共に人里離れた山荘でひっそりと暮らしていました。14歳を迎えてもなお結婚を拒む桜のもとに、王良親王の使いを名乗る青年・青葉が現れ、彼女を都へ迎えようとします。

結婚を嫌い、山荘からの家出を決行した桜は、道に迷った弾みで、巫女の白夜とのある約束を破り、禁忌とされていた満月を見てしまいます。その時、彼女の前に現れたのは、人間を襲う妖古でした。妖古は桜を「かぐや姫」と呼び襲い掛かりますが、間一髪で救われた桜は、自身の驚くべき生い立ちを明かされます。

なんと桜は、古の昔、月に帰ったかぐや姫の血を引く「月の姫」であり、妖古を退治できる唯一の剣「血桜」を使える存在だったのです。自身の血に眠る力と向き合うことになった桜は、妖古や、人間を深く憎む月の者たちとの戦いに巻き込まれていきます。特に、行方不明になっていたはずの兄・戒が、月の者である槐として立ちはだかり、桜を月へ連れ戻そうと執拗に追ってくることは、桜にとって大きな苦悩となります。

青葉との関係は、当初の許婚という形から、桜の正体を知った青葉が抱える葛藤（未来の帝としての責任と桜への想い、自身にかけられた血の呪い）を経て、互いを深く理解し支え合う関係へと変化していきます。また、朝霧や白夜といった個性豊かな仲間たちも桜の運命に深く関わります。朝霧は一寸子の血を引く雪女として血の呪いを背負い、白夜は桜の出自を知る謎多き巫女として桜を導きます。月の者側の槐の仲間たち、瑠璃条、舞々、右京、朱里なども、それぞれが複雑な過去や宿命を抱え、物語に厚みを加えていきます。

物語は、槐がかぐや姫を不完全な形で復活させ、人間界に破滅をもたらそうとする計画を阻止するため、桜たちが最終決戦に挑むクライマックスへと向かいます。月泉水と血桜を巡る戦いの果て、桜は己の命と引き換えに、白夜と共に月泉水を封印します。しかし、血桜の中に魂を宿していた仲間たちの力によって、桜は普通の人間として蘇生し、青葉との約束の場所で再会を果たします。

関連展開

本作は、集英社が提供していたインターネットラジオ「S-ラジ」内のコンテンツ「VOMIC」にて、ラジオドラマ化もされました。本編に加え、朝霧を主人公とした外伝も制作されています。また、単行本の各巻には、本編の他に読み切り作品や番外編漫画が併録されている巻もあります。

『桜姫華伝』は、平安時代の雅やかな世界観の中に、妖古との戦いや月の者たちの悲哀といったダークファンタジー要素、そして登場人物たちの絆や運命に抗う強さが描かれた、読み応えのある作品です。

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