桟熊獅

桟 熊獅（かけはし くまし）は、1923年（大正12年）4月25日に長崎県佐世保市で生まれ、2012年（平成24年）2月3日にその生涯を終えた日本の政治家です。

佐世保市に生まれた桟は、県立佐世保中学校（現在の佐世保南高校）、第五高等学校文科甲類を経て、東京大学経済学部を卒業しました。大学卒業後は、長崎県職員、佐世保市職員、そして佐世保重工業（SSK）の社員として経験を積みました。これらの職務経験は、後の彼の政治家としての活動の基礎となりました。

公職への本格的な転身は1970年3月で、佐世保重工業の営業部長から長崎県出納長に就任しました。さらに1972年3月には長崎県副知事に転じ、一期を務め、県政の中枢で行政手腕を発揮しました。

1979年4月、長年佐世保市政を担ってきた辻一三市長の引退に伴い、桟はその後継候補として佐世保市長選挙に出馬し、当選を果たしました。以後、4期16年という長きにわたり、第21代佐世保市長として市政を率いることになります。彼の在任期間中には、佐世保市の産業振興策としてテクノポリスの指定を実現したほか、交通インフラの整備として西九州自動車道の大塔までの開通を推進しました。また、地域の観光産業を活性化させる象徴的な事業として、テーマパーク「ハウステンボス」の誘致に成功するなど、市の発展に大きく貢献しました。

しかし、彼の市政運営は常に順風満帆だったわけではありません。特に、九州新幹線西九州ルートの経路選定を巡っては、当初有力視されていた早岐経由から嬉野温泉経由への経路変更問題が浮上し、その政治姿勢が厳しく追及される事態となりました。この問題は市議会でも大きな論争を呼び、1992年12月の定例市議会では、異例とも言える「市長に猛省を求める決議」が可決されるに至りました。また、1994年には記録的な少雨に見舞われ、全市域で時間給水制限という深刻な水不足に直面しました。この給水制限は同年9月から退任直前の翌年4月まで長期にわたり実施せざるを得ない状況となりました。

個人的な出来事も重なります。1994年10月29日には長年連れ添った妻が逝去しました。こうした市政上の困難（長期断水や問責決議など）と個人的な悲しみが重なり、同年12月には次期市長選への不出馬を表明し、引退の意向を示しました。そして、1995年4月の任期満了をもって佐世保市長を退任しました。

市長退任後も、1995年11月3日にはこれまでの功績が認められ、勲三等瑞宝章を受章しています。さらに、1998年から翌年にかけては長崎県教育委員長を務めるなど、引き続き郷里の発展に貢献しました。

2012年2月3日、胃癌のため88歳で死去しました。その死没日をもって、それまでの正八位から正五位に叙されました。

（脚注に関する情報は、提供された情報には具体的な内容がありませんでした。）

もう一度検索