梁澄子

人物と活動の始まり

梁澄子氏（ヤン・チンジャ）は、在日韓国人として日本で活動する社会運動家です。彼女が「慰安婦」問題に取り組むようになったのは、宋神道氏による元日本軍「慰安婦」への謝罪と補償を求める裁判がきっかけでした。この出来事を契機に、梁氏は運動の中心的な人物の一人となっていきます。現在は、日本軍「慰安婦」問題解決全国行動の共同代表や、一般社団法人「希望のたね基金」の代表理事を務めています。

活動の理念

梁氏の活動の根幹にあるのは、「『慰安婦』問題の真の解決は、何よりも被害者自身が納得できる形でなければならない」という強い信念です。彼女は、日本政府が過去の加害の事実を明確に認め、心からの謝罪を行うことを繰り返し求めています。この立場を一貫して堅持しながら、さまざまな政治的活動や社会的な働きかけを行っています。

国内外での取り組み

梁氏は「慰安婦」問題解決のため、国際的な場でも活発に発言しています。2013年9月には、フランスのパリで韓国の団体が主催した「水曜デモ」に、林博史氏と共に日本の代表団として参加しました。また、2015年5月には、韓国ソウルで開かれた「日本軍『慰安婦』問題の解決に向け話し合うアジア連帯会議」に、日本の特別報告者として出席しています。この会議では、当時の安倍晋三総理大臣が「慰安婦」を「人身売買の犠牲」などと表現したことに触れ、「これは強制連行を否定しようとする意図的な試みだ」と厳しく批判しました。そして、「安倍政権に対する批判の声を結集させることが、問題解決への道を開くだろう」と述べ、参加者間の連帯を訴えました。

日韓合意に対する姿勢

2015年12月28日に発表された日本と韓国の間での「慰安婦問題日韓合意」に対し、梁氏は強く反対しています。その理由は、日本からの真摯な謝罪が見られず、加害責任が十分に果たされていないと感じているためです。彼女はこの合意の破棄を求めています。

2017年1月、韓国政府が合意内容の履行に消極的な姿勢を見せたり、事実上反故にしたりしていることに対し、日本政府が抗議しました。これを受けて、梁氏は韓国のハンギョレ新聞のインタビューに応じ、抗議を行った日本側を批判しました。また、日韓合意の破棄に向けた機運が日本では高まらない現状について、「（問題解決のために）何もできない日本の市民社会に対して、韓国には申し訳ない気持ちがある」と述べ、日本の市民社会の状況に言及しつつ謝罪の意を表しています。

同年1月24日、NHKの「クローズアップ現代＋」が日韓合意に関連し、「合意に基づき、46人の被害者のうち34人が支援金を受け取った」と報じました。梁氏は、この報道が合意に反対し支援金の受領を拒否した被害者の声に触れていない点を問題視。北原みのり氏や金富子氏らと共に、東京で抗議集会を開催し、メディアの報道姿勢を批判しました。

「希望のたね基金」の設立と活動

2017年6月10日、梁氏は北原みのり氏や太田啓子氏らと共に、一般社団法人「希望のたね基金」を設立しました。この団体は、韓国の市民団体である韓国挺身隊問題対策協議会（挺対協）との連携を深めることを目的にしています。基金を通じて、次世代にこの問題への関心を持ってもらうための活動を行っています。

特に、日本の大学生を対象とした啓発や組織化の活動に力を入れており、その取り組みによって一定の成果を上げていることが報じられています。若い世代に歴史の真実を伝え、問題解決に向けた行動を促す重要な活動と位置づけられています。

学術的議論への参画

梁氏は、朴裕河氏の著書『帝国の慰安婦』についても批判的な見解を示しています。彼女はこの本が、挺対協のような支援団体に対する批判を含み、さらに被害者に対して「和解のために」寛容さを求める内容であるとして問題視しています。

特に、著書の中で「楽しかった思い出」や日本軍兵士との間に生まれた「恋愛感情」といった、被害者の語りの中にあるとされる記述について言及。梁氏は、朴氏がこれらの言葉から「誇り」「愛」「幸せ」といった感情を読み取ったことこそが、性奴隷にされた女性たちが受けた最も深い精神的・心理的な被害の本質であると指摘し、著者の解釈を厳しく批判しています。

梁澄子氏は、これらの多岐にわたる活動を通じて、「慰安婦」問題の被害者の尊厳回復と、日本政府による歴史的責任の認定・謝罪を求め続ける運動の中心的な役割を担っています。

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