梶田半古

梶田半古（かじた はんこ、1870年7月23日 - 1917年4月23日）は、明治時代から大正時代にかけて活躍した日本[[画家]]です。本名を錠次郎といい、初期には英洲と号していました。彼は、伝統的な日本画の枠にとらわれず、斬新な写実表現を追求し、新日本画の開拓に貢献しました。二度目の妻は、尾崎紅葉の門下で作家であった北田薄氷です。

生い立ちと画業の初期

梶田半古は、東京下谷御徒町で彫金師の梶田政晴の長男として生まれました。実家は代々幕府の鷹匠でしたが、父は彫金を家業としていました。幼少の頃から画才を発揮した半古は、小学校卒業後、家計を助けるために団扇や扇子などに絵を描いていました。13歳で浮世絵師の鍋田玉英に師事しますが、眼病により一時中断。その後、南画家の石井鼎湖に師事するも、父の死により再び中断を余儀なくされます。生活のために工芸品輸出会社で図案を描く中で、菊池容斎の門人である鈴木華邨から絵を学び、独学で人物画を修得しました。

日本画の革新と活躍

1886年、東洋絵画共進会で褒状を受賞。1891年には日本青年絵画協会の結成に発起人の一人として参加し、日本画の革新を目指します。その後、日本青年絵画協会が日本絵画協会に発展し、日本美術院が創立されると、特別賛助会員として活躍。連合共進会では、『春宵怨』や『豊年』などの浪漫的な作品を発表し、その斬新な写実表現は旧派の作風に一石を投じました。しかし、文展には健康状態や審査への不満から作品を出品していません。晩年は弟子たちの看病も虚しく、48歳で肺疾患により死去。墓所は後に墓じまいされましたが、かつては弟子の小林古径による碑が建てられていました。

図案家・挿絵画家としての才能

半古は図案家としても卓越した才能を持っていました。自作図案集『和可久佐』を出版し、アール・ヌーヴォーの影響を受けつつも、独自のスタイルを確立しました。また、挿絵画家としても多くの作品を手がけました。読売新聞社員となり、尾崎紅葉の『金色夜叉』の挿絵を描いたのを皮切りに、新聞連載小説や単行本の挿絵、雑誌の口絵など、その数は膨大です。特に、半古が描く女学生の髪型や着物の着こなしは当時の若い女性たちの憧れとなり、「半古の女学生」という言葉が生まれるほどでした。しかし、新聞小説の挿絵の仕事は次第に減り、絵葉書の仕事が増えていきました。明治30年代後半から大正にかけての絵葉書ブームの中で、半古は独自の境地を切り開き、その作品は高い評価を受けました。

晩年と評価

半古は、華やかで目を引く大作ばかりが重視される当時の風潮に警鐘を鳴らしていました。その結果、展覧会に出品されるような大作は減りましたが、その作品は後世に大きな影響を与えました。門下からは、小林古径、前田青邨、奥村土牛といった著名な日本[[画家]]を輩出しました。しかしながら、多くの作品の所在が不明であり、研究が進んでいないのが現状です。

主な作品

日本画
版画
「孔雀」
「菊に鶉」
「男」
「暗香疎影」
「雪中」
「美人図」

参考文献

添田達嶺『半古と楓湖』
細野正信監修『梶田半古の世界展』
梶田半古原画/斎藤慎一ほか編『名画で読む源氏物語 ─梶田半古近代日本画の魅力』
山田奈々子『梶田半古口絵集』
太田記念美術館編『ラスト・ウキヨエ 浮世絵を継ぐ者たち−悳俊彦コレクション』
細野正信「梶田半古の芸術」
山田奈々子 「梶田半古と口絵」
内山淳子 「梶田半古《源氏物語図屏風》をめぐって」
浦木賢治 「梶田半古筆《釈迦帰郷》について」
大木優子 「梶田半古の図案制作 ―図案集『わかくさ』を中心とする考察―」
藤懸静也 『増訂浮世絵』
日本美術院百年史編集委員会編 『日本美術院百年史』
* 上田正昭ほか編 『日本人名大辞典』

梶田半古は、その才能と革新的な精神で、日本の美術界に大きな足跡を残しました。彼の作品は、今もなお、多くの人々を魅了し続けています。

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