藤懸静也

藤懸 静也の生涯と業績

藤懸静也（ふじかけしずや）は、1881年に茨城県古河市に生まれた日本の美術史学者であり、東京帝国大学の教授を務めました。彼は号を「獅埼庵」または「獅子庵」とし、家系は旧古河藩の国家老という背景を持ちます。母方の曾祖父には著名な文人である鷹見泉石がいました。

静也は第一高等学校を経て、1910年に東京帝国大学文科大学史学科国史科を卒業しました。その後、同大学で副手としてのキャリアを開始し、1917年には國學院大学の教授となりました。1924年には史料編纂掛に嘱託され、さらに1927年からは帝室博物館の学芸委員としても活躍しました。欧米の博物館を調査し、浮世絵の収集を行い、美術研究に能力を発揮しました。

1928年に帰国後は文部省国宝鑑査官に就任し、1934年には文学博士号を取得し、その後東京帝大の教授に昇進しました。彼は1941年まで美術史を教え、この間に『国体の本義』の編纂委員（芸術担当）としても働きました。

藤懸静也が美術史アカデミズムにおいて果たした役割は特筆に値します。特に、浮世絵研究者が帝大教授に就任することは異例であり、多くの影響を与えました。彼は浮世絵の祖とされる岩佐又兵衛説を否定しましたが、その後、この考えは辻惟雄によって覆されることになります。また、静也の門下からは東京大学に多くの美術史家が誕生し、その中には吉川逸治、吉澤忠、石塚太喜治などがいます。これらの後進は、静也の教えを受け継ぎ、さらに発展させる存在となりました。吉川逸治は特に国華の編纂委員として重要な役割を果たしました。

地域文化にも深い関心を持っていた静也は、故郷古河の歴史研究や史跡保存にも力を注ぎました。1908年には『郷土史教授資料』を著し、地元の文化活動を支えるイベントや記念祭も主催しました。熊沢蕃山の記念祭や水戸志士の慰霊祭などがその一例であり、彼の地元に対する情熱と貢献は高く評価されています。

主な著作

藤懸静也の著作は数多く、美術史の理解を深める貴重な資料となっています。主な著作には以下のものがあります：

• - 『浮世絵大家画集』 編 浮世絵研究会 (1915)
• - 『浮世絵』 雄山閣 (1924)
• - 『文化文政美人風俗浮世絵集』 編 雄山閣 (1928)
• - 『奥原晴湖画集』 巧芸社 (1933)
• - 『国体の本義解説叢書 第6 日本の美術』 教学局 (1939)
• - 『東洋美術文庫 第17巻 春信』 アトリヱ社 (1939)
• - 『浮世絵の研究 上中下』 雄山閣 (1943)
• - 『木版複製源氏物語絵巻解説』 徳川黎明会 (1949)

藤懸静也の貢献は日本の美術史の発展に大きく寄与しました。その業績は今もなお、後進の学者たちによって引き継がれています。

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