棒出し

棒出しの歴史と役割

棒出し（ぼうだし）は、埼玉県幸手市の西関宿と千葉県野田市の関宿江戸町にあった水利施設で、かつて江戸川の流れを制御する目的で設置されました。

施設の概要

この施設は、江戸川の流頭部、つまり権現堂川や逆川と接続する部分に位置し、江戸川の流れが逆流しないようにするための工夫でした。具体的には、多くの丸太を打ち込むことで川幅を狭くし、水流をコントロールしていました。そのため、河川水害の軽減に寄与しました。当初は、天保年間（1830年～1843年）に建造されたとされていますが、一部の資料では1783年の時点で既に存在していた可能性が指摘されています。

水害の影響

棒出しが設置されたことで、江戸川沿いの水害が減少したものの、その反作用として利根川沿いでの水害が増えてしまいました。このバランスの変化は、明治時代においても多くの議論を呼ぶ要因となったと言われています。

1875年と1884年には、経年劣化を防ぐために玉石積みに改修されましたが、度重なる大水によってこの構造物も崩壊する運命にありました。そして1885年には、より堅固な角石積みが採用され、1898年にはセメントを用いた新方式に改良されました。

河川改修

1910年には大水害が発生し、その後の河川改修に伴って、江戸川の流れが北方に移動しました。権現堂川の閉塞も実施され、1927年には新たな流頭部に関宿水閘門が設置されます。その結果、1929年に棒出しは完全に撤去され、長い運命を終えることになります。

資材と管理

棒出しに使用された材料は、栃木県の岩船山で採取された岩で、これは火成岩であるため加工がしやすく、耐久性にも優れていました。この石材は水運を通じて渡良瀬川を流下し、棒出しの建設に活用されました。

施設が取り壊された後の角石は、現在も中の島公園や千葉県立関宿城博物館などで展示されています。また、旧関宿小学校や茨城県の善照寺鐘付堂の石垣にも再利用されています。

まとめ

棒出しは水利施設であり、江戸川の流れを制ダする重要な役割を果たしました。その歴史は、河川の治水問題や水害対策と深く関わっており、多くの地域住民に影響を与えてきました。棒出しの存在は、自然と人間社会との関係を考える上でも重要な遺産となっています。

もう一度検索