岩船山

岩船山：歴史と自然が織りなす、栃木市の神秘的な山

栃木県栃木市（旧岩舟町）に位置する岩船山は、標高172.7メートル。足尾山地の南端にあり、その特異な形状と歴史から、多くの観光客や映画関係者を魅了する場所となっています。

霊山としての歴史と岩舟石の採掘

岩船山は、日本三大霊山、日本三大地蔵の一つとして数えられ、古くから東国の人々の信仰を集めてきました。山中には、一大霊場として知られる高勝寺が鎮座しています。しかし、この山の知名度を決定づけたのは、霊山としての側面だけではありません。江戸時代から昭和にかけて、岩船山では「岩舟石」と呼ばれる石材が盛んに採掘されていました。この岩舟石は、安山岩質角礫凝灰岩の一種で、「南蛮石」とも呼ばれ、城や神社仏閣の建築などに広く用いられました。

岩舟石の採掘は、山容を大きく変貌させる結果となりました。切り立った崖など、現在見られる独特の景観は、長年にわたる採掘活動の産物なのです。当初は人力による運搬が行われ、その後は岩舟人車鉄道や内務省軽便鉄道、さらにはダンプカーによる輸送へと移り変わっていきました。最盛期には、周辺には40軒もの石材店が軒を連ねていたといいます。しかし、コンクリートの普及により、1960年代には採掘は衰退。現在では、採石は行われていません。

ロケ地として新たな魅力

採石が終了した岩船山中腹の採石場跡地は、現在では貴重なロケ地として活用されています。首都圏において、火薬を使った爆発シーンを撮影できる場所が少なくなっている中、岩船山の広大な採石場跡地は、時代劇やヒーローアクション、特撮作品などの撮影に最適な環境を提供しています。特に、スーパー戦隊シリーズのアクションシーンの撮影地として有名で、新海誠監督のアニメ映画『秒速5センチメートル』の舞台としても知られており、多くのファンが「聖地巡礼」に訪れます。

採石場跡地では、野外コンサート「岩船山クリフステージ」も開催されており、地元の活性化にも貢献しています。ミュージックビデオやCM撮影、さらには結婚記念写真撮影など、多様な用途で利用されています。2022年には、33メートルの崖から飛び降りる「Iwafuneロープジャンプ」も開業し、新たな観光資源として注目されています。

東日本大震災と兜山公園

2011年の東日本大震災では、岩船山の西側の峰がV字に崩落するなど、大きな被害を受けました。しかし、幸いにも人的被害はありませんでした。山麓の南東部には、明治天皇が野点を行った場所があり、その周辺は兜山公園として整備され、歴史をしのぶことができる場所となっています。

岩舟石資料館

岩船山の麓、岩舟駅付近には「岩舟石の資料館」があり、岩舟石に関する資料などが展示されています。1931年築の建物自体も歴史を感じさせる貴重な存在です。

岩船山は、霊山としての歴史、岩舟石の採掘の歴史、そして現代のロケ地としての役割と、様々な側面を持つ山です。その独特の景観と歴史的背景は、多くの人々を魅了し続けています。

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