棒金

棒金：積極的な居飛車戦法

棒金は、後手が石田流を採用した場合に居飛車側が用いる、攻撃的な戦法です。一般的な居飛車対振り飛車の構えだけでなく、ひねり飛車に対しても有効な手段として知られています。

金の積極的な活用

将棋において、金は守備的な駒というイメージが強いですが、棒金ではこの常識を覆し、金を積極的に前線に配置します。▲3八金、▲2七金、▲2六金と、金を一直線に突き進めることから「棒金」と呼ばれています。この他に、三間飛車に対する「きき金」、ひねり飛車に対する「たこ金」、ツノ銀中飛車に対する4六金戦法など、攻めに金を活用する戦法は他にも存在します。

棒金の狙いは、相手の駒の動きを制限することです。特に石田流は攻撃的な戦法であるため、飛車が前線に配置され、3三（後手の場合）が塞がれていることが多いため、飛車の退路が限られています。棒銀と異なり、金は横に動けるという利点があり、飛車の逃げ道を封鎖し、相手を窮地に陥れます。

棒金の威力とリスク

棒金の最大の強みは、金の力で相手の飛車や角を牽制し、攻めを仕掛けられる点です。後手番でも採用可能な点が大きなメリットです。図で示されているような局面では、△9五歩と端を突くのが急所となります。先手が同歩とすると、△同香では▲9六歩と飛車の横利きを生かされてしまいますが、▲9五同歩には△9六歩と打つ手が存在し、先手の陣形を崩すことができます。

しかし、棒金はリスクも伴います。失敗すれば相手に金を取られるだけでなく、終盤で自陣の囲いが弱体化することもあります。また、金の初期配置から右銀を囲いに使うには多くの手数が必要となり、右銀の活用が難しく、最悪の場合、終盤でバラバラな配置になる可能性もあります。金は斜め後ろに動けないため、銀と比べて柔軟性に欠けるという弱点も持っています。

棒金の有効性と現代将棋

なぜ、このようにリスクの高い棒金が一般化しないのかという疑問も浮かびますが、それはそのリスクの大きさゆえです。しかし、石田流のように飛車の退路がなく、速攻を仕掛けてくる戦法に対しては、堅実な金の働きが非常に有効となります。

ただし、21世紀以降は、▲7七桂を保留する石田流の出現や、△8三金の際に▲8五桂と飛ぶ戦法、さらに▲7七桂-8八角-7九銀型といった新たな対応策により、居飛車側の金の圧力を軽減する工夫が見られるようになってきました。

まとめ

棒金は、積極的で強力な戦法ですが、そのリスクも考慮する必要があります。石田流に対する有効な手段の一つである一方で、現代将棋においては、石田流側の対策も進化しているため、その有効性は変化していると言えるでしょう。将棋の戦術の奥深さを示す一例として、棒金は学ぶ価値のある戦法と言えるでしょう。

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