棚

棚の基本

棚とは、水平に板を渡し、その上に物を置くための装置です。英語では「shelf（シェルフ）」または「rack（ラック）」と訳されます。用途や設置場所に応じて、様々な種類が存在します。

棚の分類

棚は、その機能や構造によって多様な分類が可能です。

移動の可否による分類:
置き棚: 床に直接置くタイプの棚で、移動が可能です。例として、戸棚、茶棚、書棚などがあります。ただし、地震の際には転倒の危険性があるため、固定対策が推奨されます。
造り付けの棚: 家屋の構造に固定された棚で、移動はできません。書院造りの床脇棚などが該当し、安全性に優れます。

用途による分類:
本棚: 本を収納するための棚。
食器棚: 食器を収納するための棚。
商品棚: 店舗で商品を陳列するための棚。古い言葉で「見世棚（みせだな）」とも呼ばれます。
閼伽棚: 仏教で閼伽（仏前へ供える水）を置くための棚。
神棚: 神道の神具などを置くための棚。
戸棚: 前面に扉が付いた棚。

素材による分類:
スチールラック: スチール製の棚。
木製棚: 木製の棚。

その他
ワイヤーシェルフ: 金属製のメッシュ構造で、高さ調節が可能な組み立て式の棚。

棚の歴史

世界の歴史

棚は世界各地で古くから利用されてきました。

日本の歴史

「棚（たな）」という言葉は、大和言葉で「た」+「な」の構成で、「た」は手の古形、「な」は水平を表します。

古代
『垂仁紀』には「板挙、これをば拕儺（タナ）と云ふ」という記述があり、棚が古くから存在していたことを示唆しています。

平安時代
貴族の家具として、「二階厨子」や「二階棚」が用いられました。

鎌倉時代以降
武家社会では、書院造りの中に「違い棚」が登場しました。
商店では、商品を陳列するための「見世棚」が用いられるようになりました。これは、商品を高く掲示することで、見やすく、また塵にまみれないようにする工夫から生まれたものです。
江戸時代には、「神棚」が登場し、家庭で神を祀る場所として用いられるようになりました。

近代
「冠棚」は元服時にかぶる冠を置く棚でしたが、元服の文化が衰退したため、現在では使われなくなりました。

乗り物の棚

鉄道車両、バス、船舶、旅客機などにも手荷物用の棚が設置されています。

鉄道車両: かつては網棚が一般的でしたが、現在は金属製や強化ガラス製のものが主流です。
航空機: 小型で扉のない棚をハットラック、蓋付きの大容量のものをオーバーヘッドビンと呼びます。

その他の情報

地震対策: 置き棚は地震時に倒壊する危険性があるため、固定器具での固定が推奨されます。
棚物: 和美術の分類で、棚に飾ることを目的とした作品を「棚物」と呼びます。
ことわざ: 「棚に上げる」「棚から牡丹餅」など、棚を使ったことわざがあります。
用途の多様性: 本棚を観賞用に使ったり、お金を隠したりするなど、棚は多様な使い方ができます。
エタジェール: フランスの家具で、棚板と脚で構成され、骨董品を飾るのに使われます。

比喩としての「棚」

蔓棚: 蔓が茂ってできる状態を棚に見立てたもの。
地形: 大陸棚、棚田など、地形を棚に見立てる場合があります。
* 釣り: 魚の遊泳層（深さ）を「棚」と呼びます。

日本古代の「棚」

古代には、水辺に建てられた「棚状の建物」が、神を祀る場所として利用されていたという説があります。

まとめ

棚は、物を整理・収納するだけでなく、陳列や装飾など、幅広い用途で利用される重要な家具です。歴史を通じて様々な変化を遂げ、現代の私たちの生活に欠かせない存在となっています。

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