網棚

網棚とは

網棚とは、電車やバスの車内、座席と天井の間に設置された、手荷物を置くための棚のことです。主に、座席に置くと邪魔になるようなカバンやリュックサックなどを置くために利用されます。網棚は、鉄道車両やバスにおける手荷物収納の基本的な設備として、長らく利用されてきました。

網棚の構造と材質

網棚の基本的な構造は、金属やプラスチック製の枠に、網状の素材を張ったものです。古い車両では、網の部分が糸を編んだものであったり、枠が木製のものも見られます。近年では、ステンレスなどのパイプを用いた「パイプ式」の網棚も多く採用されています。また、特急用車両や新型車両では、網状ではなく、強化ガラスやアルミ板を使用した荷物置き場も登場しています。これらは厳密には「荷棚」と呼ぶべきですが、一般的には網状でなくても「網棚」と呼ばれることが多いです。

網棚の歴史と変遷

かつて、地下鉄車両では「乗車距離が短い」などの理由から、網棚が省略されることが多くありました。しかし、相互直通運転の増加により乗車距離が伸びたこと、直通先の車両との兼ね合いから、設置が進みました。一方で、札幌市営地下鉄のように、現在でも網棚が設置されていない路線もあります。これは、駅間が短く乗車時間が相対的に短いという理由からですが、議論の対象となっています。

網棚の利用シーンと注意点

混雑した車内では、荷物を座席や床に置くことは他の乗客の迷惑になるため、網棚や膝の上に置くことが推奨されます。ラッシュ時など、車内が混雑している時は、つり革のほかに網棚の枠につかまることもできます。しかし、網棚は、他の乗客の手が届きにくく、忘れ物のリスクや、盗難のリスクもあります。

網棚の問題点

網棚には、いくつかの問題点が指摘されています。

荷物の落下リスク: 網棚の奥行きが浅いため、振動で荷物が落下する危険性があります。
積み降ろしの困難さ: 特に混雑時や大きな荷物の場合、網棚への積み降ろしは他の乗客の迷惑になることがあります。
忘れ物のリスク: 降車時に網棚の荷物を忘れる可能性があります。
盗難のリスク: 荷物が手元から離れ、目の届かない場所にあるため、盗難に遭う危険性があります。
利用の困難さ: 身長が低い人は網棚に手が届きにくいという問題もあります。
埃の問題: 荷物を置く際に、荷物に付着していた埃などが直下の乗客に降りかかることがあります。

網棚の進化と今後の展望

これらの問題点を踏まえ、鉄道事業者では様々な工夫を凝らした網棚を開発・導入しています。例えば、荷物の落下を防ぐために板状にしたもの、荷物を置きやすくするために高さを下げたもの、忘れ物防止や防犯のためにガラス製にしたものなどがあります。また、駅到着前に網棚付近の照明を明るくすることで、取り忘れを防止する試みも行われています。今後は、より使いやすく安全な網棚の開発が進むことが期待されます。

網棚の代替案

旅客機では、蓋を閉じることができる共用の収納棚（オーバーヘッド・ストウェッジ）が座席上に設置されています。これは、網棚よりも落下のリスクが少なく、荷物も安全に保管できるという利点があります。将来的に、鉄道車両にもこのようなタイプの収納棚が導入される可能性もあるでしょう。

まとめ

網棚は、鉄道やバスの車内で手荷物を収納するための便利な設備ですが、いくつかの問題点があることも事実です。しかし、鉄道事業者の努力により、より使いやすく安全な網棚へと進化を続けています。今後も、網棚は公共交通機関における手荷物収納の重要な役割を担い続けるでしょう。

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