森信雄

森信雄七段：波瀾万丈の将棋人生と多くの弟子たち

森信雄七段は、1952年2月10日、愛媛県伊予三島市（現・四国中央市）に生まれました。幼少期は貧しい家庭環境で育ち、いじめにも遭いましたが、小学5年生で将棋を始めると急速に腕を上げ、アマチュア二段の腕前まで上達します。

高校卒業後、兵庫県伊丹市の工場に勤めながら、師匠となる南口繁一九段が開いていた将棋教室に通い、19歳の時に奨励会を受験。年齢制限のため3級受験でしたが、4級で合格するという異例のスタートを切ります。これは、当時関西本部の奨励会員が少なく、人材確保が課題だったためでした。

奨励会では、大阪の呉服屋に住み込み、将棋の指導をしながら生活費を稼ぎましたが、年齢制限（21歳までに初段昇段）に迫られると精神的に不安定になり、実家に戻って将棋に専念します。関西本部の塾生となった森は、雑用をこなす厳しい生活の中で将棋の研鑽を積み、ベテラン棋士からの指導も受けました。

21歳を過ぎても初段に昇段できませんでしたが、関西本部の事情により、在籍を続け、1974年に初段、1976年には24歳で四段に昇段しプロ棋士となります。プロ入り後は、1980年の新人王戦で優勝、2007年には七段に昇段するなど活躍しました。2017年、フリークラス規定により引退しています。

森信雄七段は、振り飛車党として知られ、特に振り飛車穴熊を得意としていました。終盤の読みが強く、詰将棋の作家としても著名で、『水平線』を始め、多数の作品集を出版しています。特に3手詰は類問2問をセットにするという独自のスタイルで知られています。また、将棋教室では必ず詰将棋を取り入れ、その重要性を説いています。

プロ棋士になってからは、「気持ちの良い所」に住みたいという理由で奈良市に移住しましたが、競輪場が近いため騒音に悩まされたエピソードも語られています。ヘビースモーカーでもあり、一日にタバコを大量に吸っていたそうです。

森信雄七段は、多くの弟子を育成したことでも知られています。特に村山聖九段（追贈）とは師弟関係を超えた深い交流があり、『聖の青春』にもその様子が描かれています。阪神淡路大震災では、弟子の船越隆文さんを亡くすという悲劇も経験しています。弟子を失った悲しみを乗り越え、再び弟子を育成し続けました。弟子たちと毎年1月17日を「一門の日」として、船越さんの霊前で冥福を祈る集会を24年間続けました。

森信雄七段は、詰将棋の創作でも才能を発揮し、『あっと驚く三手詰』で将棋ペンクラブ大賞を受賞、また『逃れ将棋』シリーズでも同賞を受賞しています。『将棋世界』誌では「次の一手」問題や写真紀行の連載も務めていました。趣味は写真、競馬、競輪、麻雀など多岐に渡ります。

森信雄七段は、13名の棋士と5名の女流棋士を育て上げ、西の『森一門』として、所司和晴七段率いる東の『所司一門』と並ぶ程の規模を誇ります。その門下からは、山崎隆之八段、糸谷哲郎八段、千田翔太八段など、多くの活躍する棋士を輩出しています。

森信雄七段の将棋人生は、困難を乗り越え、多くの弟子を育成し、将棋界に多大な貢献をした、波瀾万丈な物語でした。彼の功績は、これからも将棋界に長く語り継がれていくでしょう。

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