森安敏明

森安敏明のプロ野球人生

森安敏明（もりやす としあき）は1947年12月18日に岡山県玉野市で生まれ、1998年7月29日に亡くなるまでの50年間、名投手として知られています。彼は日本プロ野球界で特異な経歴を持ち、その中で記録的な成績と悲劇的な終焉を迎えました。特に、森安は通算22個の与死球を記録しており、これは現在でもNPBの最多与死球記録として残っています。しかし、その華々しい成績とは裏腹に、1970年の「黒い霧事件」により、八百長の関与が発覚し、プロ野球から永久追放させられるという運命を辿りました。

経歴の初期

森安は関西高等学校に在学中から注目され、同級生として岡山三羽ガラスと称された平松政次や松岡弘と共に成長しました。1964年の全国高等学校野球選手権東中国大会では準決勝に進出するも、甲子園出場を逃しましたが、翌1965年春の中国地区大会では優勝を果たしました。その年のドラフトで東映フライヤーズに1位指名を受けて入団し、プロデビューするとすぐに初完封勝利を挙げるなど、才能を存分に発揮しました。

投手としての特性

森安のピッチングはサイドスローから繰り出される豪速球が特徴的でした。その球速は当時の球界でも注目されており、多くのOBから史上最速の一人と評されました。江夏豊や山崎裕之は、森安の球を「打てない」と感じたことを明かすなど、その威力は圧倒的でした。ただし、その制球力には課題があり、特に右打者に対しては荒れ球が多く、故に「怖い投手」として記憶されています。また、与死球数の多さは彼の投球スタイルと無縁ではなく、時には彼自身が振り回されることもありました。

黒い霧事件

1970年7月、森安は八百長の誘いを受けたことが発覚し、永遠の愛情を持っていたプロ野球界から追放されることになります。実際に彼は依頼を受け入れ、報酬を受け取ったことを認めざるを得なかった。この事件は、日本プロ野球にとって大きな衝撃となり、彼のキャリアに大きな陰を落としました。彼は記者会見で「ファンの一人ひとりに土下座したい」と述べ、その後の彼の人生に対しての悔恨が浮かび上がりました。

追放後の生活

永久追放後の森安の消息は長らく不明でしたが、1971年に北海道での生活が報告されました。この間、彼は演歌歌手としてデビューしたり、スナックや自動車整備工場で働くなど、多彩な活動を展開しました。その後、大阪府で健康機器の営業をし、故郷である岡山県に戻った後はトラック運送会社に勤務しながら少年野球の指導にも取り組みました。おそらく、彼の経験は教え子たちに多くの影響を与えたことでしょう。

晩年と死去

1998年に彼は心不全で逝去しましたが、永久追放処分の解除は彼自身の申し立てによってのみ可能であったため、そのままの状態で人生を終えました。しかし、彼の功績は今でも岡山県内で「森安敏明旗争奪野球大会」が開催されるなどして顕彰されています。また、彼の弟子にはプロ野球選手として成功したものもおり、その教えは次世代へと引き継がれています。森安の投手としての才能と、八百長事件によって翻弄された人生は、今でも多くの野球ファンの記憶に残るでしょう。

もう一度検索