森尚謙

森尚謙（もり しょうけん）

森尚謙（1653年 - 1721年）は、江戸時代中期の儒学者であり、水戸藩士として知られています。彼は、後の『大日本史』編纂の根幹を成した人物であり、水戸学の発展にも大きく貢献しました。

生涯

摂津天満（現在の大阪市）で医師の息子として生まれた森尚謙は、大坂で医術、京都で儒学を学びました。その才能は水戸藩主・徳川光圀に認められ、1684年に彰考館の編修として迎えられました。光圀は、明暦の大火で焼失した『本朝編年録』に代わる新たな歴史書の編纂を志しており、尚謙はその事業の中核を担うことになったのです。

尚謙は、列伝の作成を通じて日本史を代表する人物を選出し、『大日本史』の基礎を築きました。しかし、光圀の死後、藩内の権力争いの中で、彼の立場は一時的に弱まります。それでも尚謙は、水戸本町に講堂を建てて儼塾を開き、水戸学の教育普及に尽力しました。彼は、歴史と正名を思想の根本とする水戸学を切り開き、文武両道を重んじる教育を実践しました。

水戸学への貢献と影響

森尚謙は、儒学だけでなく、医術や兵学、剣術にも長けており、その学識の高さから多くの知識人と交流しました。特に、赤穂藩の寺井玄渓とは親交が深く、赤穂事件の際には浪士の助命嘆願に奔走しました。

しかし、彼の融和的な思想は、同じ水戸学の中でも対立を生むことになります。特に、陽明学者である安積澹泊との対立は深刻で、澹泊は尚謙の著作を焼き払うよう命じるほどでした。この対立は、後の水戸藩における内紛の遠因となり、幕末の動乱へと繋がっていきます。

死後

1721年、森尚謙は69歳で亡くなりました。彼の開いた儼塾は、その後も水戸藩の教育機関として存続し、水戸学の精神は弘道館へと引き継がれました。しかし、尚謙と澹泊の思想的な対立は、水戸藩に深い亀裂を残し、幕末の悲劇へと繋がっていくことになります。彼の墓は、茨城県水戸市の神崎寺にあります。

著書

『儼塾集』 全10巻（1698年）
『護法資治論』 全10巻（1707年）

森尚謙は、水戸学の発展に大きく貢献した一方で、その思想的な対立が後の水戸藩に大きな影響を与えた人物として、歴史に名を残しています。

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