森川竹窓

森川竹窓（もりかわ ちくそう、1763年～1830年）は、江戸時代中期から後期にかけて活躍した、多才な芸術家でした。書、絵画、篆刻のいずれにおいても高い評価を受けており、その名を後世に伝える数々の作品を残しています。

竹窓は、大和国高市郡鳥屋村で生まれました。17歳で江戸に出て佐竹家に仕えた後、浪華（現在の大阪）に移り住み、そこで自身の芸術家としてのキャリアを本格的にスタートさせます。彼は常日頃から古法帖の臨模に励み、研鑽を積んだ結果、書家としての名声は高く、広く知れ渡ることとなりました。

書のみならず、竹窓は篆刻も嗜み、その技術もまた高い水準に達していました。絵画においても才能を発揮し、特に墨竹図を得意としていました。彼の作品からは、確かな技術と同時に、自然への深い愛情が感じられます。

竹窓の芸術家としての交友関係も広く、文化4年（1804年）には、著名な画家である浦上玉堂が竹窓の家に滞在したという記録が残されています。また、書画骨董の収集家としても知られており、松平定信が『集古十種』を編纂した際には、その協力を要請されるほどでした。

竹窓は、備後町壱丁目と高麗橋丼池に私塾を開き、後進の指導にも熱心に取り組んでいました。多くの門弟が彼の指導の下で才能を開花させ、日本の芸術文化の発展に貢献しました。

その人脈は芸術家のみに留まらず、文人としても知られる上田秋成とも親交があったと伝えられています。彼らとの交流は、竹窓の芸術に更なる深みと広がりを与えたことでしょう。

晩年は京都で過ごし、享年68歳で生涯を閉じました。彼の墓所は、大阪市天王寺区餌差町にある大応寺にあり、同じく著名な人物である木村巽斎と同じ墓地に眠っています。

竹窓の残した作品は、現在も高く評価されており、彼の芸術に対する情熱と、時代を超えて人々を魅了する作品の数々は、日本の芸術史において重要な位置を占めています。

主な著作には、『集古浪華帖』『集古仮名遣』『雨傘余情』『草行書字句選』『古香斉筆記』『欵藪』などがあります。『古香斉筆記』は龍谷大学図書館に所蔵されています。

森川竹窓の才能は、書、画、篆刻にとどまらず、収集家、教育者としての側面も持ち合わせていました。彼の多様な才能と豊かな人間関係は、江戸時代後期の文化を彩る重要な要素であったと言えるでしょう。現代においても、彼の作品やその生涯は、多くの研究者や芸術家たちにインスピレーションを与え続けています。その功績は、日本の芸術史に燦然と輝く、大きな足跡として刻まれています。

森川印刷所社長である森川桑三郎氏は、竹窓の曽孫にあたります。このことは、竹窓の芸術家としての名声と、その家系の繁栄が、時代を超えて繋がっていることを示しています。

もう一度検索