森慈秀

森慈秀：天草五橋架橋に生涯を捧げた政治家

森慈秀（もり じしゅう）は、明治23年（1890年）12月5日に熊本県天草郡湯島村（現・上天草市）で生まれ、昭和48年（1973年）4月15日に82歳で没した政治家です。彼は、熊本県議会議員（1期）や大矢野町長（3期）を務め、特に天草五橋の架橋に尽力した人物として知られています。

青年期と初期の活動

幼少期を湯島で過ごした森は、小学校卒業後、村役場の小使として働き始めました。その後、貿易商の親戚を頼って上海に渡り、事業で成功を収めました。大正時代に帰国した際には、当時の金額で100万円という巨額の富を手にしていたと伝えられています。30歳を過ぎてからは、義弟と共に上京し、早稲田大学専門部法科で法律を学びました。

政治家としての道

昭和10年（1935年）、森は熊本県議会議員選挙に初当選。県議として活動する中で、宇土半島と天草諸島を結ぶ架橋構想を提唱しますが、当時は周囲の理解を得られませんでした。戦後、国民協同党から参議院議員選挙に出馬するも落選。しかし、昭和29年（1954年）に蓮田敬介が県議会で再び天草架橋を提案したことを契機に、島民の間で架橋への機運が高まりました。昭和30年（1955年）には、熊本県知事を会長、森を副会長とする天草架橋期成会が結成され、約25万人の島民による献金運動も展開されました。

大矢野町長として

昭和33年（1958年）、森は68歳で大矢野町長に就任します。町長として、天草架橋の実現に全力を注ぎました。昭和37年（1962年）には天草架橋の起工式が行われ、昭和41年（1966年）9月24日、ついに天草五橋（天草パールライン）が開通しました。この功績により、同年11月には自治功労者として勲五等双光旭日章を受章しています。また、天草五橋開通の翌年には、島民有志によって森の銅像が建立されました。

昭和45年（1970年）4月、森は3期12年を務めた大矢野町長を退任。在任期間中の給料全額を町に寄付しました。同年6月には、大矢野町名誉町民に推挙されています。

死後も残る功績

森の死後、彼の寄付によって大矢野町立森記念図書館（現在の上天草市立大矢野森記念図書館）などが建設されました。昭和61年（1986年）には、熊本県近代文化功労者として表彰されています。上天草市が誕生した2004年には、森の生涯を描いたドキュメンタリードラマが放映され、彼の功績が改めて称えられました。

森慈秀は、天草五橋の架橋という偉業を成し遂げただけでなく、地域社会の発展に大きく貢献した人物として、その名は永く語り継がれています。

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